注目ポイント
- 標準化された口蓋創では、自然治癒はPRF、PRGF、およびコラーゲン代替材と比較して、より速い創閉鎖を示した。
- 多血小板フィブリン(Platelet-rich fibrin, PRF)および成長因子豊富血漿(Plasma rich in growth factors, PRGF)は、軟部組織再生において、コラーゲンベースの被覆材や自然治癒を上回る有意な優位性を示さなかった。
- 患者報告による術後疼痛は、いずれの治療法間でも同程度であった。
- 介入の有無にかかわらず、前方口蓋創は後方創よりも疼痛知覚が強い傾向を示した。
研究背景
創傷管理と治癒の最適化は、口腔外科および粘膜関連介入における中核的課題である。多血小板フィブリン(Platelet-rich fibrin, PRF)や成長因子豊富血漿(Plasma rich in growth factors, PRGF)などの血小板濃縮製剤は、細胞増殖、血管新生、基質リモデリングを調節する成長因子を高濃度で供給し、軟部組織修復を促進し得ることから注目されている。同様に、コラーゲンベースの創傷被覆材は、組織再生を支持する足場として広く用いられている。しかし、これらの補助療法と自然治癒を比較したエビデンス、特に標準化された口腔内創傷におけるエビデンスは一貫していない。臨床実践においては、創閉鎖速度や疼痛軽減といった術後転帰の最適化が求められるため、この点は特に重要である。
研究デザイン
本ランダム化比較臨床試験では、20人の健常成人参加者を対象に創傷治癒の経時的変化を評価した。各参加者には、6 mm×3 mmの標準化された口蓋創が4か所作成された。介入は、PRF、PRGF、コラーゲンベース創傷被覆材(CS)の適用、または自然治癒に委ねる方法(対照)であり、被験者内で無作為化することで被験者間変動を制御した。すべての創部被覆材は安定性を確保するため、交差縫合で固定された。臨床フォローアップでは、標準化されたデジタル写真および患者報告疼痛スコアを、ベースライン、術後2日、5日、7日、9日、12日、14日に測定した。
主要評価項目は、写真データから定量的に評価した、経時的な未閉鎖創面積の割合であった。副次評価項目は、各介入間の患者快適性を評価する主観的疼痛スコアであった。統計解析には、被験者内の反復測定を考慮するため、パラメトリックおよびノンパラメトリックの縦断的モデルが用いられた。
主要所見
全群において、14日間を通じて未閉鎖創面積の一貫した減少が認められた。なお、いくつかの欠損では術後2日に一過性の拡大が記録され、これは初期の正常な炎症過程を反映している可能性がある。
治療法間の差が最も顕著であったのは術後7日であり、未閉鎖創面積の割合は35.7%~47.0%であった。予想に反して、自然治癒群はPRF、PRGF、およびコラーゲン代替材群よりもわずかに速い閉鎖速度を示した。この結果は、健常な口腔粘膜における生理的治癒過程が、小さく標準化された欠損においては、補助療法の利益に近似するか、あるいはそれを上回ることを示唆する。
疼痛評価では、すべての群で時間経過とともに疼痛強度の有意な低下が認められたが、治療群間に統計学的有意差は認められなかった(p > 0.05)。前方口蓋創は後方部位よりも一貫して疼痛が強く知覚される傾向を示し、これは口蓋の各領域における感覚支配および創傷感受性の違いと整合する。
介入に関連する有害事象または合併症は報告されず、本コホートにおける試験治療の安全性が支持された。
専門家コメント
本研究は、口腔内における種々の治療法下での軟部組織治癒ダイナミクスに関して、精度の高い臨床データを提供している。小さく健康な創において、自然治癒がPRF、PRGF、およびコラーゲン被覆材と同等か、それを上回る成績を示したという所見は、同様の臨床状況でこれら補助療法を日常的に用いる必要性に疑問を投げかける。これは、補助療法の有益性を左右する重要因子として、患者選択および創傷特性を重視する近年のエビデンスとも一致する。例えば、より大きな欠損や、糖尿病、喫煙、免疫不全など創傷修復を障害する全身因子を有する患者では、血小板濃縮製剤や足場材料からより大きな利益が得られる可能性がある。
限界として、サンプルサイズが小さいこと、および比較的均一で小さな創を有する健常者に限定されていることから、複雑な臨床像への一般化には制約がある。血小板濃縮製剤のin vivoにおける生物学的活性や、コラーゲン足場との統合に関するさらなる機序研究により、これらの治療が明確な優位性を示す臨床状況が明らかになる可能性がある。
現在の臨床ガイドラインでは、病変の大きさ、患者の併存疾患、および治癒能に応じて、生物学的製剤と創傷被覆材を個別化して使用することが推奨されている。本試験は、過剰治療と不要な費用を回避するために、厳密なランダム化評価が重要であることを示している。
結論
健常成人に人工的に作成した標準化口蓋欠損では、自然治癒はPRF、PRGF、またはコラーゲン代替材を用いた補助療法と比較して、わずかに速い創閉鎖を示した。いずれの方法でも、患者報告による術後疼痛は同程度であった。これらの結果は、健常者における小さな口腔粘膜創の通常管理において、血小板濃縮製剤やコラーゲン被覆材の追加的利益は限定的であることを示唆する。
今後の研究では、治癒能が低下した患者や、より大きく臨床的に複雑な創においてこれらの介入を評価し、補助的創傷被覆材や生物学的製剤が回復を有意に促進する状況を明確化する必要がある。
資金提供および登録
本研究はBienz et al.によって実施されたが、抄録内には特定の資金提供情報は記載されていない。詳細な資金提供の謝辞および試験登録については、原著を参照されたい。
参考文献
- Bienz SP, Fischer AC, Mancini L, Strauss FJ, Ferrari RM, Hitz S, Jung RE, Thoma DS. Wound Healing Patterns of PRF and PRGF Versus a Collagen-Based Substitute and Spontaneous Healing – A Randomised Controlled Clinical Trial Assessing Wound Closure of an Experimental, Standardised Palatal Defect. J Clin Periodontol. 2026 Aug;53(10):1565-1574. PMID: 42554427.
- Dohan Ehrenfest DM, Rasmusson L, Albrektsson T. Classification of platelet concentrates: from pure platelet-rich plasma (P-PRP) to leucocyte- and platelet-rich fibrin (L-PRF). Trends Biotechnol. 2009 Mar;27(3):158-67.
- Miron RJ, Chai J, Zheng S, et al. Use of platelet-rich fibrin and platelet-rich plasma for bone and soft tissue regeneration: A systematic review. J Periodontol. 2020;91(6):676-698.