注目ポイント
- 超広視野 swept-source OCT(UWF-SS-OCT)により、病的近視における黄斑中心窩、視神経乳頭(ONH)、および後部ぶどう腫の形態を同時に3次元評価できる。
- 黄斑中心窩とONHは、後部ぶどう腫内でしばしば異なる地形的領域を占めており、後極のリモデリングが不均一であることを示唆する。
- 視神経乳頭の位置は眼軸長と逆相関を示し、眼軸長が長い眼ほど、ぶどう腫底部にONHが存在する割合は低かった。
- 乳頭周囲萎縮の面積は眼軸長およびONHの位置の双方と関連しており、病的近視における黄斑変化と乳頭周囲変化の背景に異なる機序があることを示している。
研究背景
病的近視は世界的に主要な視力障害の原因の一つであり、眼軸長の過度な延長と、それに伴う眼後部の構造的変形を特徴とする。後部ぶどう腫(posterior staphyloma, PS)は、眼球後部に生じる限局性の外方膨隆または強膜拡張であり、高度近視に関連する代表的な解剖学的変化であるとともに、黄斑の構造変化や乳頭周囲萎縮など、視機能を脅かす合併症の素地となる。
画像診断技術が進歩した現在でも、不整なぶどう腫の地形の中で黄斑中心窩と視神経乳頭の空間的関係を明確にすることは依然として難しい。この関係の理解は、黄斑合併症の機序解明、リモデリング動態の評価、さらには病的近視のリスク層別化の精緻化に重要である。
研究デザイン
本研究は、硝子体網膜疾患を専門とする単一の三次紹介施設で実施された横断的観察症例集積研究である。病的近視に後部ぶどう腫を伴う25例44眼を登録した。
すべての眼に対し、26×21 mmの走査範囲と9.0 mmの撮像深度を用いた超広視野 swept-source 光干渉断層計(ultrawidefield swept-source optical coherence tomography, UWF-SS-OCT)を施行し、黄斑中心窩、ONH、および後極全体の輪郭を同時に3次元可視化した。黄斑中心窩とONHの地形は、詳細な3次元解析および断層解析に基づき、ぶどう腫底部に位置するか、傾斜部に位置するかに分類した。
混合効果ロジスティック回帰モデルにより、黄斑中心窩およびONHの位置と、年齢、眼軸長、ぶどう腫の型などの臨床指標との関連を評価した。さらに、線形混合効果モデルを用いて、乳頭周囲萎縮面積と関連する因子を検討した。
主な結果
44眼の解析により、病的近視における後極解剖は空間的に不均一であることが明らかになった。黄斑中心窩は、ぶどう腫底部よりも傾斜部に位置する頻度が高かった一方、ONHの分布は底部と傾斜部の間で比較的均等であった。
重要な点として、黄斑中心窩の位置と、年齢、眼軸長、ぶどう腫亜型などの臨床変数との間に統計学的に有意な関連は認められず、黄斑中心窩の位置はこれらの因子から比較的独立していることが示唆された。
これに対し、ONHの位置は眼軸長と有意な関連を示した。眼軸長が長いほど、ONHがぶどう腫底部に位置する確率は低下した(オッズ比 0.62、95%信頼区間 0.40–0.97、P=.036)。これは、眼球延長が進行するにつれて、視神経乳頭がぶどう腫の最深部から離れる方向に移動する傾向を示唆している。
乳頭周囲萎縮(peripapillary atrophy, PPA)は対象集団で高頻度に認められ、眼軸延長とONHの地形の双方と独立に関連していた。ONHがぶどう腫底部に位置する眼ではPPA面積が大きく(β=4.23、P=.0155)、また眼軸長はPPA面積と正の相関を示した(β=1.54、P=.0105)。これらの結果は、眼球形状、視神経乳頭の力学、乳頭周囲の変性変化との関連を示している。
局所的なぶどう腫の形態と黄斑合併症の有無との間には有意な関連は認められず、黄斑病変は、ぶどう腫の大まかな形状そのものよりも、黄斑中心窩の位置的独立性やその他の要因によって影響を受ける可能性が示された。
専門的考察
本研究は、UWF-SS-OCTの技術的進歩を活用し、後極を前例のない包括的な3次元像として捉え、病的近視における重要な網膜ランドマーク間の精緻な空間関係を明らかにした。
黄斑中心窩とONHがぶどう腫内で異なる区画を占めることの示唆は、近視眼において空間的に不均一な力学・生物学的リモデリングが進行しているという概念を支持する。比較的定位が安定している黄斑中心窩とは異なり、ONHは眼軸延長の影響をより動的に受けると考えられ、強膜および網膜における応力分布の変化を介して、乳頭周囲萎縮の形成に寄与している可能性がある。
これらの知見は臨床的にも重要であり、緑内障性視神経障害や乳頭周囲変性のリスクは、ぶどう腫内でのONH地形に応じて異なる可能性を示唆する。UWF-SS-OCTによるONH位置評価が、高度近視における病勢進行のバイオマーカー、あるいは治療指針の一助となり得るかを検討するためには、さらなる縦断的・機能的研究が必要である。
限界として、症例数が比較的少ないこと、および横断研究であることから、因果関係の推定や経時的変化の評価はできない。また、研究集団が単一の三次医療機関に限られているため、一般化可能性にも影響し得る。とはいえ、本研究は病的近視におけるぶどう腫関連病態の機序理解に有用な知見を提供し、個別化評価への展開可能性を示している。
結論
超広視野 swept-source OCTマッピングにより、病的近視の後極は解剖学的に複雑であり、後部ぶどう腫内で黄斑中心窩と視神経乳頭が、それぞれ異なり、かつ概ね独立した地形的位置を占めることが示された。視神経乳頭の位置は眼軸長と逆相関を示し、ONHの位置および眼軸延長の双方が乳頭周囲萎縮の程度と有意に関連していたことから、黄斑と視神経乳頭におけるリモデリング機序の相違が示唆される。
これらの知見は、近視性後眼部の力学的特性の理解を深め、近視性変形および変性に伴う視機能障害リスクの層別化とモニタリング戦略の改善に寄与する可能性がある。
資金提供およびClinicalTrials.gov
原著では、資金提供 स्रोतおよび臨床試験登録情報は記載されていない。
参考文献
Quarta A, Forte P, Chujo S, Feo A, Huang J, Abbasgholizadeh R, Sivilotti F, Soylu C, Lee S, Corradetti G, Ohno-Matsui K, Sadda SR. Ultra-Widefield OCT Mapping of Foveal and Optic Nerve Head Topography Within Posterior Staphyloma in Pathologic Myopia. Am J Ophthalmol. 2026 Sep 17; PMID: 42754080.
Ohno-Matsui K. Pathologic Myopia. Asia Pac J Ophthalmol (Phila). 2016 Nov-Dec;5(6):415-423. doi: 10.1097/APO.0000000000000263.
Shinohara K, Ohno-Matsui K, Yoshida T, et al. Morphologic Characteristics of Posterior Staphylomas in Pathologic Myopia and Their Influence on Macular Complications. Am J Ophthalmol. 2018;196:156-165.