Medicareにおける病院と医師の支払い格差は拡大——外科領域で何が起きているのか

注目点

本研究では、2019年から2023年にかけて、一般外科手術におけるMedicare支払いの病院と医師の乖離が拡大していることを定量化した。診断関連群(Diagnosis-Related Group, DRG)調整により病院への支払いは大幅に増加した一方、Current Procedural Terminology(CPT)コードに連動する医師への支払いは、実質ベースでわずかに減少していた。この格差拡大は、症例数の多い一般的手技から複雑な移植術まで、幅広い手術に影響している。結果は、公平な外科医療提供を持続するために、病院と医師の償還方法を整合させる政策改革の必要性を強く示している。

研究背景

Medicareは、医療提供者に対して2つの異なる方式で償還している。すなわち、病院には入院前向き支払い制度(Inpatient Prospective Payment System, IPPS)に基づき診断関連群(DRG)を用いて支払い、医師にはPhysician Fee ScheduleによりCPTコードを用いて支払う。これらの制度は時間の経過とともに別々に発展してきたため、支払いの不均衡を生じさせる可能性がある。この乖離を理解することは、外科医の報酬、病院収益、ひいては患者の受療機会と外科医療の質に影響するため重要である。広く懸念されているにもかかわらず、対応する外科手技間での支払い格差を定量的に評価した研究は限られていた。

研究デザイン

研究者らは、2019年から2023年までのMedicare支払いデータを解析し、一般外科手技に焦点を当てた。16のCPTコードを、症例の複雑度が異なる対応するMedicare severity DRGs(MS-DRGs)と組み合わせ、その結果、489,111件の入院退院例を表す31本の対応DRG/CPT比の時系列データを作成した。統計学的トレンド解析には、時間経過に伴う線形変化を検出するためのordinary least squares回帰、単調トレンドの評価のためのMann-Kendall検定、変化率を定量化するためのSen slopeを用いた。多重検定補正には、統計学的厳密性を保つためにBenjamini-Hochbergのfalse discovery rateを適用した。

主要結果

検討した31本のDRG/CPT支払い比系列のうち、24本(77.4%)で統計学的に有意な増加傾向が認められ、false discovery rate調整後も病院と医師の支払い格差が拡大していることが示された。有意な減少を示す系列はなかった。平均すると、DRG-max/CPT支払い比は23.1%上昇しており、医師への支払いに比べて病院への支払いが堅調に増加したことを反映していた。同期間に、医師のCPT支払いはインフレ調整後ドルで3.5%わずかに減少した。

病院と医師の支払い比の年間増加が最も大きかったのは、endovascular aneurysm repair(EVAR)が年4.7ポイント増(P=0.021)、心臓移植が年4.0ポイント増(P=0.031)、肝移植が年1.8ポイント増(P=0.006)であった。重要なことに、胆嚢摘出術や小腸切除術のような高頻度手技でも有意な乖離が認められ、この現象が稀少手術や複雑手術に限定されないことが示された。

これらの傾向は、DRG重みが毎年更新され最新の病院コストデータを取り込む一方で、医師のfee scheduleにおけるconversion factorがインフレに追随できず、医師報酬が相対的に停滞または低下していることを反映している。この乖離は、重症度調整を行うall patient refined(APR)-DRGsを用いる州Medicaid制度や民間保険者のシステムでは、病院への支払いが増加する一方で医師のCPT支払いが横ばいにとどまるため、さらに増幅される可能性がある。

専門家の見解

観察された支払い乖離は、外科医療提供の持続可能性と公平性について重要な問いを投げかける。医師、特に外科医は、診療コストや業務の複雑化が進む一方で、償還率の低下という圧力にますます直面している。一方、病院は資源利用をより正確に反映する更新済みDRG償還の恩恵を受けている。この不整合は、医療従事者の士気、外科専門医の採用、および定着に影響を及ぼす可能性がある。

専門家は、病院と医師の支払い枠組みの整合が極めて重要であると強調している。CPT評価の更新をDRG調整と足並みをそろえることで、均衡回復に寄与する可能性がある。さらに、quality metricsやbundled payment modelの導入も、より統合的で公平な償還アプローチに資する可能性がある。

ただし、本研究には、他の支払者の方法論のニュアンスを十分に捉えきれない可能性のあるMedicareデータへの依存という限界がある。さらに、解析は一般外科に限定されており、他の診療科では支払い動態が異なる可能性がある。それでもなお、これらの知見は、政策立案者に制度的改革を検討するよう強く促すものである。

結論

本包括的評価は、2019年から2023年にかけて、一般外科においてMedicare支払いが医師よりも病院に有利な方向へ有意かつ拡大する乖離を示した。DRG再調整とCPTに基づく医師fee schedule更新が異なる軌道をたどったことで、外科医療提供と公平性を損なうおそれのある顕著な不均衡が生じている。これらの格差を是正するには、償還方法を再整合させる政策介入が必要であり、病院と医師の双方が公正に報酬を受け、外科医療におけるアクセスと質が維持されることを確保すべきである。今後の研究では、より広範な医療政策改革の指針とするため、他の診療科や支払者に対象を拡大して解析を行うべきである。

資金提供

原文書には記載なし。

参考文献

1. Wolansky RL, Hiraldo LA, Sujka J, Kuo PC. The Great Divergence: Quantifying Hospital-Physician Payment Inequity in Medicare 2019 to 2023. Ann Surg. 2026 Aug 18. PMID: 42608725.
2. Centers for Medicare & Medicaid Services. Inpatient Prospective Payment System (IPPS).
3. Centers for Medicare & Medicaid Services. Physician Fee Schedule.
4. Tsai TC, Joynt Maddox KE. The Impact of Physician Payment Reforms on Access to Surgical Care. JAMA Surg. 2024;159(3):201-203.
5. Nguyen LL, Birkmeyer JD. Matching Hospital Payments and Physician Compensation: An Urgent Need for Medicare Policy Reform. Health Affairs. 2025;44(5):839-847.

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