注目ポイント
本研究は、C型肝炎核酸検査陽性ドナーからC型肝炎陰性レシピエントへの腎移植(D+/R-)において、7日間の周術期direct-acting antiviral(DAA)予防投与で管理した最大規模のコホートを報告しており、予防投与のみで92%超にウイルス学的治癒を達成した。
ウイルス血症の再燃は受者の7.4%で認められ、その大半は術後28日以内に検出された。一部の症例では resistance-associated substitutions が同定され、これを契機として一次治療の再治療が奏効した。
1年生存率は患者で96.6%、移植腎で94.1%と高く、腎機能も安定して推移したことから、この短期抗ウイルス戦略の臨床的安全性と有効性が示された。
研究背景
腎移植は末期腎不全(end-stage renal disease, ESRD)に対する第一選択治療であるが、臓器不足が利用可能性を制限している。高い有効性を有する direct-acting antivirals(DAAs)の登場により、HCV陽性ドナーをHCV陰性レシピエント(D+/R-)へ用いることが実現可能な選択肢となってきた。この戦略はドナープールを拡大する一方で、移植片由来HCV感染の伝播と管理に関する懸念も伴う。
移植後に長期の抗ウイルス治療を行う方法では良好な成績が示されているが、短期の周術期予防投与は、より費用対効果が高く、運用上も सरल便な可能性がある。しかし、7日間という短期抗ウイルス予防投与の実臨床成績に関するデータは依然として限られている。
研究デザイン
本研究は、2018年12月から2025年8月までに実施された、HCV核酸検査陽性ドナーからHCV陰性レシピエントへの連続204例の腎移植を対象とした、単一施設前向き観察コホート研究である。
全受者に対し、移植当日から sofosbuvir/velpatasvir(400 mg/100 mgを1日1回)を7日間投与した。HCV RNAは移植後90日まで連続的にモニタリングした。予防投与開始後に検出可能なHCV RNAを認めた breakthrough viremia の患者には、可能であれば耐性検査に基づき、DAAの全治療コースを実施した。
評価項目は、breakthrough viremia の発生率、予防投与または再治療後12週時の sustained virologic response(SVR12)、ならびに1年生存率、移植腎生着率、および腎機能評価とした。
主な結果
204例中15例(7.4%、95%信頼区間 4.2%–11.9%)で、ドナー由来の breakthrough viremia が発生した。大部分(93.3%)は術後28日目までに同定され、短期予防投与にもかかわらず早期のウイルス増殖が示唆された。
8例中4例で、特に nonstructural protein 5A(NS5A)領域における resistance-associated substitutions が検出され、一部の症例では予防投与の有効性を損なう可能性のあるウイルス耐性が示された。
breakthrough 感染を来した症例のうち、DAAによる一次の全治療コースの再治療により14/15例(93.3%)で SVR12 が得られた。1例では追加の救済抗ウイルス療法を要したが、最終的に SVR12 を達成し、治療された breakthrough 症例における総合治癒率は100%であった。
注目すべき点として、再治療開始は93%の患者で保険の事前承認により遅延し、待機期間の中央値は36日であった。これは移植後の迅速な抗ウイルス治療を妨げ得る制度上の障壁を示している。
1年患者生存率は96.6%、移植腎生着率は94.1%であり、腎機能は全期間を通じて安定していた(平均推算糸球体濾過量 53.0 ± 22.0 mL/min/1.73 m2)。予防投与または移植手技に関連する重大な安全性シグナルは認められなかった。
専門家コメント
本研究は、ウイルス血症を有するドナーから未感染レシピエントへの腎移植におけるHCV伝播を軽減するため、7日間の短期周術期抗ウイルス予防投与が実行可能で有効であることを示す、堅牢な実臨床エビデンスを提供している。多くの患者で予防投与のみで高い SVR が得られたことから、早期介入によりウイルス感染を効果的に予防または制御できることが示された。
一方で、breakthrough viremia の発生と NS5A における resistance-associated substitutions の存在は、厳密なウイルス学的モニタリングと迅速に再治療へ移行できる体制の重要性を強調している。保険の事前承認による遅延は、適時の患者ケアに影響し得る制度的課題を浮き彫りにした。
観察された耐性パターンを踏まえ、研究者らはより広い耐性カバレッジが期待される7日間の glecaprevir/pibrentasvir レジメンへ慎重に移行している。現在進行中の REFORM-HEPC レジストリは、代替予防レジメンの比較有効性と安全性に関するさらなるデータを提供する予定である。
本研究は単一施設研究であるため外的妥当性に一定の制限があるが、前向きデザインと大規模コホートは結果の信頼性を高めている。今後の多施設ランダム化研究により、最適な予防投与期間とレジメンがより明確に確立される可能性がある。
結論
HCVウイルス血症ドナーからの腎移植における sofosbuvir/velpatasvir を用いた7日間の短期周術期抗ウイルス予防投与は、実行可能かつ有効な戦略であり、1年時点で患者および移植腎の転帰を損なうことなく、大多数の受者でウイルス学的治癒を達成した。
breakthrough 感染は、適切なタイミングでの全治療コースによる再治療で管理可能であるものの、継続的なモニタリングと迅速な治療アクセスの必要性を示している。潜在的な耐性変異を標的とする代替DAA併用療法への移行は、転帰をさらに最適化し得る。
これらの実臨床データは、安全にドナープールを拡大しつつ、良好な移植成績を維持するという進化する臨床実践に貢献する。
資金提供および ClinicalTrials.gov
研究資金および臨床試験登録に関する詳細は、原著抄録には記載されていなかった。詳細は該当論文または所属機関に問い合わせることで入手可能である可能性がある。
参考文献
1. Dadabaev F, Yakubu I, Agegnehu B, et al. Short Perioperative Antiviral Prophylaxis for Hepatitis C Viremic Donor Kidney Transplantation: Outcomes in 204 Recipients. Transplantation. 2026 Aug 13. PMID: 42587362.
2. Saxena V, et al. Kidney transplantation from hepatitis C viremic donors into negative recipients: a systematic review. Transpl Infect Dis. 2020;22(1):e13293.
3. Levitsky J, et al. Use of HCV-infected donors in solid organ transplantation: expanding the donor pool with direct-acting antivirals. Am J Transplant. 2017;17(9):2531-2539.