注目ポイント
- スライディング adipofascial flap 技術は、下半身リフト術において股関節部および上臀部のプロジェクションを温存・増強する。
- 自家脂肪移植は、臀部中央〜下部のボリューム回復を補完することで、本術式の効果を高める。
- 145人の女性患者を対象とした後ろ向き解析では、合併症率は低く、flap 壊死は認められなかった。
- 本法は股関節外側部(hip-flank)の脂肪組織を有効活用し、予測性の高い自然な審美結果をもたらす。
研究背景
下半身リフトは、一般に buttock lift 手術とも呼ばれ、大幅な減量後や加齢による組織弛緩の改善を目的として女性患者にしばしば施行される。しかし、臀部ボリュームの回復に用いられてきた従来の回転軸性 flap の既知の限界として、股関節領域が平坦化し、男性化および上臀部プロジェクションの低下を招きやすい点が挙げられる。このような審美的妥協は患者満足度を低下させ、手術成績を制限しうる。股関節と臀部の自然な曲線を維持することは、患者の期待に沿う女性的シルエットを得るうえで極めて重要である。
股関節外側部の脂肪組織は、近位臀部および股関節のボリューム回復において有用な解剖学的材料であるにもかかわらず、これまで十分に活用されてこなかった。自家脂肪移植はボリューム付加に有効である一方、上臀部および股関節領域に必要な三次元的プロジェクションを確実に再建できるとは限らない。したがって、これらの課題に対応する革新的術式には臨床的意義がある。
研究デザイン
本稿では、2015年1月から2020年12月までにC.P.が施行した、新規の広基部スライディング adipofascial flap 技術を用いた下半身リフト(buttock lift)手術を受けた全女性患者を対象とする後ろ向きレビューを報告する。コホートは145例で構成され、そのうち132例(91%)では、中央および下部臀部のボリューム補填を目的として自家脂肪移植も併施された。
年齢、body mass index(BMI)、手技の詳細、術後合併症を含む患者背景を収集した。追跡期間は2〜48か月で、1人当たり平均9.7か月であった。介入は、股関節外側部から採取した血流の豊富な adipofascial flap を滑走させて上臀部および股関節輪郭を増強し、さらに遠位部のボリューム増大のために自家脂肪移植を組み合わせることに重点を置いた。
主な所見と結果
治療を受けた145人の女性患者において、平均年齢は46歳(範囲23〜68歳)、平均BMIは28.3(範囲17〜39.6)であった。併用手技全体における総合合併症率は17.2%であり、buttock lift 手技自体に直接起因する合併症率は8.3%であった。重要な点として、adipofascial flap 壊死は一例も認められず、本 flap の十分な血流と安全性が裏付けられた。
この術式は自然な股関節曲線を保ちながら、従来の回転 flap では拡大が難しい上臀部の持続的なプロジェクションを実現した。補助的に用いた自家脂肪移植は、中央および下部臀部にボリュームを付与し、調和の取れた丸みのある臀部輪郭を形成した。
確認された合併症は、ボディ・コンタリング手術で予想される範囲にとどまり、軽度の創傷治癒遅延および一過性の漿液腫を含んだが、flap の生存性には影響しなかった。併用術式により、股関節外側部の貴重な脂肪組織を温存しつつ近位部のプロジェクションを最適化でき、移植脂肪の吸収や長期的なボリューム保持の予測困難性に左右されやすい脂肪移植への過度な依存を回避できた。
専門的考察
スライディング adipofascial flap 技術は、股関節の平坦化と男性化という buttock lift 手術における一般的な落とし穴に精緻に対処することで、本術式の発展を示すものである。従来の回転軸性 flap などの手法では、残存組織量の制約により上臀部および股関節輪郭の温存が不十分となることが多かった。広基部で血流に富む adipofascial flap を用いることで、術者は基礎となる血管解剖および機械的移動原理を尊重しながら、より確実に近位部ボリュームを増強できる。
自家脂肪移植は依然として不可欠な補助的手段であり、flap 単独では十分に到達しにくい遠位臀部領域の微調整に寄与する。この二重アプローチは、組織移植と脂肪移植それぞれの利点を活用し、インプラントよりも自家組織の利用を重視する近年の潮流にも合致する。
本研究の限界として、後ろ向き研究であること、ならびに平均追跡期間が比較的短いことが挙げられる。より長期のデータにより、ボリューム保持および審美的持続性が明らかになる可能性がある。さらに、患者報告アウトカム指標が提示されていないため、術後の満足度や生活の質に関する追加的知見は得られていない。
結論
下半身リフト手術における新規スライディング adipofascial flap 技術は、女性患者において股関節および上臀部のプロジェクションを効果的に温存・増強する。遠位部のボリューム補填として自家脂肪移植を併用することで、予測可能な審美結果を得ながら、当該コホートではflap 壊死を認めないなど、安全性プロファイルも良好である。
本法は、股関節外側部の脂肪組織を最大限に活用し、自然な輪郭を回復して術後不満足の頻度の高い要因に対処する点で、従来法を上回る。これらの知見を検証し、患者選択基準を洗練するためには、標準化されたアウトカム指標を用いた前向き研究が求められる。
資金提供および ClinicalTrials.gov 情報
原著論文では、外部資金提供源および臨床試験登録についての記載はなかった。
参考文献
1. Patronella C, Garlick JW, Collins C. Preserving Hip Projection in Lower Body Lift (Buttock Lift) Surgery: A Novel Adipofascial Flap Technique. Aesthetic Surgery Journal. 2026;46(10):1147-1158. PMID: 42225433.
2. Momeni A. et al. Techniques in Buttock Contouring: Trends in Autologous Buttock Augmentation. Plastic and Reconstructive Surgery. 2020;146(5):587e-599e.
3. Hoyos A, Perez ME. Autologous Fat Grafting in Buttock Contouring: Review and Outcomes. Clinics in Plastic Surgery. 2017;44(3):433-443.
