注目ポイント
- Lepodisiranは、複数用量でアポリポ蛋白(a)およびアポリポ蛋白Bに結合した酸化リン脂質(OxPL)を有意に低下させた。
- OxPLの低下はLp(a)濃度の低下と密接に相関しており、粒子数の比例的なクリアランスを示唆した。
- 高感度C反応性タンパク(high-sensitivity C-reactive protein, hsCRP)とOxPL変化との間に明確な相関は認められなかった。
- これらの結果は、Lepodisiranによる心血管リスク低減試験の生物学的妥当性を裏づけるが、現時点で臨床的有益性を示すものではない。
研究背景
リポ蛋白(a)(lipoprotein(a), Lp(a))は遺伝的に規定されるリポ蛋白であり、動脈硬化性心血管疾患(atherosclerotic cardiovascular disease, ASCVD)および大動脈弁狭窄症の原因的リスク因子として広く認識されている。Lp(a)高値は、従来の脂質指標とは独立して心血管リスクを増大させるが、その主因は、アポリポ蛋白B(apolipoprotein B, apoB)にアポリポ蛋白(a)(apolipoprotein(a), apo(a))が結合した特異的な構造にある。apo(a)およびapoBに結合した酸化リン脂質(oxidized phospholipids, OxPL)は、Lp(a)の炎症促進性および動脈硬化促進性を媒介する因子として関与している。
現在、非特異的脂質低下薬によるLp(a)低下効果は限定的であり、標的治療への大きなアンメットニーズが残されている。Lepodisiranのような小干渉RNA(small interfering RNA, siRNA)治療は、apo(a)メッセンジャーRNAを選択的に分解することで、肝臓におけるLp(a)産生を抑制し、持続的なLp(a)低下をもたらす治療法として登場した。
研究デザイン
本研究は、Lp(a)高値の320例を登録した、世界66施設で実施された無作為化プラセボ対照第2相試験である。Lepodisiranは、ベースラインおよび180日目に、16 mg、96 mg、または400 mgを皮下投与した。213例のサブセットでは、ベースライン、240日目、および360日目に酸化リン脂質濃度が測定され、apo(a)およびapoBに結合したOxPLに焦点を当てた事後解析が可能となった。
本解析の主要評価項目は、OxPL-apo(a)およびOxPL-apoBにおけるベースラインからのプラセボ調整後百分率変化であった。さらに、Lp(a)、OxPL-apo(a)、OxPL-apoB、および全身性炎症バイオマーカーである高感度C反応性タンパク(hsCRP)の変化量の関連を評価するため、相関解析が行われた。
主要結果
ベースラインにおけるOxPL-apo(a)およびOxPL-apoBの中央値は、それぞれ122.0 nmol/L、27.7 nmol/Lであった。Lepodisiranは、用量依存的かつ顕著なOxPL低下を、プラセボに対して示した。
240日目のOxPL-apo(a)のプラセボ調整後減少率は以下のとおりであった。
– 16 mg:-21.9%(95% CI:-45.0%~11.0%)
– 96 mg:-65.1%(95% CI:-73.8%~-53.6%)
– 400 mg:-94.2%(95% CI:-95.7%~-92.2%)
同様に、240日目のOxPL-apoBの減少率は以下のとおりであった。
– 16 mg:-39.5%(95% CI:-51.2%~-25.0%)
– 96 mg:-76.9%(95% CI:-80.6%~-72.5%)
– 400 mg:-88.5%(95% CI:-90.4%~-86.3%)
360日目でも低下は持続していたが、240日目に比べるとやや減弱していた。
OxPL-apo(a):
– 16 mg:-23.7%(95% CI:-47.0%~9.8%)
– 96 mg:-41.6%(95% CI:-56.4%~-21.6%)
– 400 mg:-80.7%(95% CI:-85.7%~-73.9%)
OxPL-apoB:
– 16 mg:-30.6%(95% CI:-46.4%~-10.2%)
– 96 mg:-57.1%(95% CI:-65.2%~-47.2%)
– 400 mg:-79.9%(95% CI:-83.8%~-75.2%)
重要な点として、OxPL-apo(a)の百分率変化は、OxPL-apoBよりもLp(a)の百分率変化とより強く相関しており、OxPL低下の大部分がLp(a)粒子数の減少に連動していることが示唆された。hsCRPの変化とOxPLとの間に有意な相関は認められず、この状況では全身性炎症マーカーがOxPL動態を直接反映していない可能性が示された。
有害事象および安全性評価は、長期作用型siRNA治療に関する既報と一致しており、解析期間中に予期しない安全性シグナルは認められなかった。
専門家コメント
本事後解析は、Lepodisiranによって肝臓でのapo(a)合成を抑制しLp(a)を低下させることで、Lp(a)介在性の血管疾患および弁膜疾患に寄与するapo(a)・apoB結合OxPLも有意に減少するという生物学的根拠を支持する。
OxPL-apo(a)の低下とLp(a)低下との相関が強いことは、非選択的な脂質低下戦略よりも、Lp(a)粒子そのものを標的とする重要性を強調している。OxPL低下が動脈硬化促進性および炎症促進性経路を減弱させる機序的妥当性はあるものの、本研究は心血管イベント減少などの臨床的有益性をまだ示していない。
限界として、事後解析であること、ならびに臨床転帰に対する追跡期間が比較的短いことが挙げられる。後続時点でのOxPL測定や、第3相試験における臨床イベント発生率の評価は、これらのバイオマーカー所見を検証するうえで重要である。
今後の研究では、OxPL低下が動脈硬化および大動脈弁疾患の進展改善に結びつくかどうかを、十分な心血管転帰試験と併せて検討する必要がある。進行中のLepodisiran第3相心血管転帰試験(NCT05565742)は、これらの疑問に答える手がかりを提供すると期待される。
結論
apo(a)を標的とする長時間作用型siRNAであるLepodisiranは、Lp(a)粒子に関連する酸化リン脂質を大きく、かつ持続的に低下させた。これらの所見は、同薬の強力なLp(a)低下作用と整合し、心血管リスク修飾の機序的基盤を補強する。ただし、臨床的有益性は未だ証明されておらず、進行中の大規模転帰試験による確認が必要である。
資金提供と臨床試験登録
本試験は、Lepodisiranを開発しているスポンサーにより資金提供された。臨床試験登録番号はNCT05565742である。
参考文献
1. Nissen SE, Navar AM, Krege JH, et al. Effect on Lipoprotein(a) Oxidized Phospholipids of Lepodisiran, an Extended-Duration siRNA Targeting Lipoprotein(a). J Am Coll Cardiol. 2026 Aug 31; PMID: 42671367.
2. Tsimikas S. A Test in Context: Lipoprotein(a): Diagnosis, Prognosis, Controversies, and Emerging Therapies. J Am Coll Cardiol. 2017;69(6):692-711.
3. Gordts PL, et al. (2018). Lipoprotein(a) metabolism and atherogenesis: A comprehensive review. Front Cardiovasc Med.
4. Daniels LB, et al. Oxidized Phospholipids, Lipoprotein(a), and Cardiovascular Disease: Key Concepts in Clinical and Basic Research. J Lipid Res. 2020.
