SAPIEN M3システムによる経中隔TMVR:ENCIRCLE MAC Registryが示した僧帽弁輪石灰化患者の1年成績

SAPIEN M3システムによる経中隔TMVR:ENCIRCLE MAC Registryが示した僧帽弁輪石灰化患者の1年成績

注目ポイント

・SAPIEN M3システムを用いた経中隔経カテーテル僧帽弁置換術(transseptal transcatheter mitral valve replacement, TMVR)は、外科手術の適応とならない症候性の僧帽弁輪石灰化(mitral annular calcification, MAC)患者において、高い手技成功率を示した。
・1年フォローアップでは、患者の98.5%で僧帽弁逆流(mitral regurgitation, MR)が軽度以下に維持された。
・NYHA機能分類、生活の質(Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire, KCCQ)、および6分間歩行距離の有意な改善は持続した。
・本手技は、脳卒中、左室流出路(left ventricular outflow tract, LVOT)閉塞、弁血栓症、弁再介入を含む、注意を要するが管理可能な合併症プロファイルを伴った。

研究背景

僧帽弁輪石灰化(MAC)は、弁輪を硬化させて弁尖の可動性に影響を及ぼし、僧帽弁逆流(MR)、狭窄、あるいは混合性僧帽弁機能障害(mixed mitral valve dysfunction, MVD)をしばしば引き起こす。MACを有する高齢患者は、多くの場合、複数の併存疾患と複雑な心臓解剖を伴い、外科的リスクの評価を一層困難にする。従来の外科的僧帽弁置換術または形成術は、弁輪および周辺構造への石灰化の関与ならびにフレイルのため、許容しがたい高い罹患率・死亡率を伴うことがある。経カテーテル僧帽弁修復技術は進歩しているものの、MAC関連MVDの多くの患者は解剖学的制約により修復療法の適応外である。そのため、この困難な集団の症状と転帰を安全かつ効果的に改善し得る、より低侵襲な代替治療の必要性が高まっている。

研究デザイン

ENCIRCLE MAC Registryは、MAC関連僧帽弁機能障害を有する症候性患者に対して、SAPIEN M3システムを用いた経中隔経カテーテル僧帽弁置換術(TMVR)を評価する前向き、多施設、単群研究である。組み入れ対象は、中等度から重度のMR、重度僧帽弁狭窄、または中等度MRと僧帽弁狭窄の合併を有し、外科的弁置換術または経カテーテル僧帽弁修復に不適格と判断された患者であった。外科的リスクが高く、弁輪解剖が複雑な患者をスクリーニングし、364例が評価され、100例でTMVRが試行され、そのうち93例で弁留置に成功した。主要複合エンドポイントは、手技後1年時点の全死亡および心不全入院(heart failure hospitalization, HFH)で構成された。

主要所見

患者の平均年齢は76.1±9.2歳で、男性51.0%、NYHA III度またはIV度が73.0%を占め、重度の症候性集団であった。僧帽弁置換術に対するSociety of Thoracic Surgeons(STS)Predicted Risk of Mortalityスコアの平均は8.4%±4.9%と高値であり、高い外科的リスクを示していた。

1年フォローアップ時点で、全死亡または心不全入院を主要エンドポイントとしたKaplan-Meier累積推定値は33.6%(95%CI:25.0%~44.1%)であった。内訳として、全死亡は21.1%、HFHは19.4%であった。手技中および手技後の合併症には、機能障害を残す脳卒中5.1%、臨床的に有意な左室流出路(LVOT)閉塞4.8%、弁血栓症2.3%、輸血または弁再介入を要する溶血9.2%、僧帽弁再介入11.4%が含まれた。

重要な点として、機能的転帰は著明に改善した。1年時点で、98.5%の患者でMRは1+以下であり、僧帽弁逆流の持続的かつ有効な低減が示された。NYHA機能分類も有意に改善し、多くの患者がI度またはII度へ移行した。Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire(KCCQ)総合スコアや6分間歩行距離といった患者報告アウトカムも、追跡期間を通じて意味のある持続的改善を示し、症状および生活の質の向上が示唆された。

専門家コメント

ENCIRCLE MAC Registryの結果は、従来の外科手術や修復術の候補になりにくいMAC関連僧帽弁疾患患者に対し、より低侵襲で有効な治療という未充足ニーズに応える重要な前進を示すものである。SAPIEN M3システムによる経中隔アプローチは、解剖学的アクセス上の利点を活用し、手技の複雑性を低減し、リスクを抑制し得る。持続的なMR低減と臨床的利益は、僧帽弁置換後に期待される血行動態改善と整合的である。一方で、脳卒中やLVOT閉塞を含む有害事象率は、厳密な患者選択、周到な手技計画、そして術者の熟練が重要であることを強調している。

限界として、無作為化比較群を伴わない単群デザインであること、および比較的高い合併症率が挙げられ、経験の浅い施設への一般化可能性は制限される可能性がある。MACにおける経中隔TMVRの臨床的位置付けをより明確にするためには、より大規模な集団と長期追跡を伴う追加研究、ならびに他治療法との比較試験が必要である。

結論

外科手術または修復術の適応とならない、MAC関連僧帽弁機能障害を有する慎重に選択された重症症候性患者に対して、SAPIEN M3システムを用いた経中隔TMVRは有効な治療選択肢となり得る。本手技は、1年時点で持続的な僧帽弁逆流の低減、機能状態の改善、ならびに生活の質の向上をもたらした。手技リスクは残存するものの、本介入は、構造的心疾患領域における従来高リスクかつ十分な治療機会が得られていなかった集団に対する治療選択肢を拡大する。

資金提供およびClinicalTrials.gov

ENCIRCLE MAC RegistryはEdwards Lifesciencesの支援を受けた。試験はClinicalTrials.govにNCTXXXXXXXとして登録されている(詳細は原文に記載なし)。

参考文献

Guerrero ME, Daniels DV, Whisenant B, et al. Transseptal Transcatheter Mitral Valve Replacement for Mitral Annular Calcification: ENCIRCLE MAC Registry 1-Year Outcomes. J Am Coll Cardiol. 2026; doi:10.1016/j.jacc.2026.09.016. PMID: 42873164.

Wang DD, Eng M, Jilaihawi H, et al. Transcatheter mitral valve replacement in patients with severe mitral annular calcification: a systematic review. J Am Coll Cardiol Intv. 2021;14(11):1203-1214.

Nishimura RA, et al. 2020 ACC/AHA Guideline for the Management of Patients with Valvular Heart Disease. Circulation. 2021; 143(5):e72–e227.

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