外科医の過重な業務負担と主観的負担:米国全国調査から見えた実態

注目ポイント

米国外科医を対象とした最近の全国調査により、外科医の業務負担は依然として非常に高く、多くの回答者がその負担を過重と認識していることが示された。こうした主観的負担に影響する主な要因としては、累積業務量、診療年数、性別、外科のサブスペシャルティが挙げられる。これらのデータは、医療従事者の配置計画や、外科医のウェルビーイングおよび患者安全の向上を目的とした施策に有用な実証的指標を提供する。

研究背景

外科診療は本質的に高い負荷を伴い、予定勤務時間を超えて臨床業務と事務業務の双方に多大な責任を負うことが多い。外科医の業務負担が大きいことは以前から認識されているものの、主観的な業務負担を体系的に定量化した実証データは乏しい。こうした知見の不足は、効果的な人員計画、外科医のバーンアウトリスク低減、ひいては患者ケアの質と安全性に対する影響を妨げる。とりわけ、世界的に医療従事者のウェルビーイングへの懸念が高まる中で、これらの課題への対応は喫緊かつ不可欠である。

研究デザイン

本研究は、2024年9月から11月にかけて、American College of Surgeons(ACS)の会員である米国の現役外科医を対象に全国配布された横断的匿名アンケート調査を用いた。対象基準は、ACSのメール配信リストに掲載されている臨床活動中の外科医アソシエイトおよびフェローとした。招待メールを開封した受信者は24,937人で、5,329件の回答が得られ、回答率は21.2%であった。収集項目には、人口統計学的情報、サブスペシャルティ、診療年数、週当たりの予定業務時間、予定外勤務日の頻度、ならびに自己申告による業務負担の認識(「多すぎる」「ちょうどよい」「少なすぎる」に分類)が含まれた。

主な結果

回答者は男性が65.6%と多数を占め、女性外科医は30.7%であった。また、半数超(52.4%)が診療歴20年以上であった。最も多く含まれた専門領域は、集中治療・外傷・急性期外科(17.2%)および一般外科(15.3%)であった。

予定業務時間の中央値は週68.1時間(四分位範囲[IQR]68.1~94.8時間)であり、臨床的関与の大きさが示された。外科医はまた、予定外勤務日が週中央値5日(IQR 2~7日)であると報告しており、固定勤務予定を超える追加的業務負担の存在が示唆された。

主観的負担については、業務負担の認識を回答した者の58.3%が自身の負担を「多すぎる」と評価し、36.6%が「ちょうどよい」と回答した。多変量順序ロジスティック回帰分析により、主観的負担の増大と独立して関連する複数の因子が同定された。

  • 累積業務量:総労働時間が長いほど、負担感は強かった。
  • 診療年数:診療歴6~10年(OR 1.85、95% CI 1.12~3.07)および20~29年(OR 1.96、95% CI 1.22~3.14)の外科医では、業務負担を過重と認識するオッズが高かった(p<0.001)。
  • 性別:女性外科医は、業務負担を「多すぎる」と認識しやすかった(OR 1.8、95% CI 1.33~2.45、p<0.001)。
  • サブスペシャルティ:小児外科(OR 5.19、95% CI 1.95~13.80)および泌尿器科(OR 3.85、95% CI 1.43~10.40)は、より高い主観的負担と関連していた。

さらに、conditional inference tree解析では、診療年数が主要な予測因子であり、その次に業務時間の閾値(特に週66.0時間および46.2時間)が続き、さらに診療年数の異なる外科医群におけるサブスペシャルティと性別の差異が示された。

専門家コメント

本研究は、外科医集団における業務負担と主観的負担のばらつきを明らかにし、経験年数、臨床需要、サブスペシャルティの特性、性別要因が複雑に相互作用していることを浮き彫りにした。中堅層(診療歴6~29年)の外科医で負担感がより強いことは、増大する職業上の責任と、私生活や家族責任との両立の難しさを反映している可能性があり、これがストレスやバーンアウトに寄与しうる。女性外科医でより高い負担が認められた点は、外科キャリアにおけるワークライフバランス、評価、支援の格差を示唆する既存文献とも整合する。

小児外科や泌尿器科に関する所見は、これらの領域が特有の業務上の負荷または制度的課題を抱えており、さらなる検討に値することを示している。週平均時間が従来の推奨を上回っていることは、外科業務の持続可能性や、医療の質と安全性への影響について重要な問題提起となる。

限界としては、回答者の自己選択バイアス、および自己申告に基づく業務量と負担感の評価への依存が挙げられる。ただし、これらは主観的である一方、ウェルビーイングや定着に影響する実臨床上の経験を反映する重要な情報でもある。とはいえ、ACS会員を活用することで、米国で実際に診療している外科医を代表するサンプルが確保されている。

結論

本包括的な全国調査により、米国の外科医における業務負担は高く、かつ多様であり、過半数がそれを過重と認識していることが示された。主観的負担を最も強く規定する因子は診療年数であり、総業務量、専門領域、性別がこれを補完した。これらの知見は、対象を絞った人員計画、資源配分、ならびに外科医の健康、満足度、ひいては患者転帰の最適化を目的とする介入開発に向けた重要な実証的基準を提供する。今後の研究では、これらの格差の背景にある機序を解明し、持続可能な外科診療キャリアを促進する介入を評価すべきである。

資金提供および臨床試験

本研究は独立して実施され、外部資金提供源は報告されていない。横断調査であるため、関連する臨床試験登録はない。

参考文献

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