AHB-137、ヒト初回投与試験で示された慢性B型肝炎への有望な抗ウイルス活性と安全性

注目点

このヒト初回投与第1相臨床試験では、HBV mRNAの保存領域に近い3’末端を標的とする新規の非抱合型アンチセンスオリゴヌクレオチド(antisense oligonucleotide, ASO)であるAHB-137を、健常者および慢性B型肝炎(chronic hepatitis B, CHB)患者において評価した。AHB-137は概して忍容性が良好で、ほとんどの有害事象は軽度であり、さらに速やかな吸収と長い半減期を含む予測可能な薬物動態を示し、B型肝炎表面抗原(hepatitis B surface antigen, HBsAg)を迅速かつ持続的に低下させた。HBsAgはウイルス活性を反映する重要な指標である。

研究背景

慢性B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus, HBV)感染は依然として世界的な公衆衛生上の課題であり、全世界で2億5000万人超が慢性感染を有し、肝硬変や肝細胞癌を含む重篤な肝疾患のリスクにさらされている。現在のヌクレオシ(t)ドアナログ療法はウイルス複製を効果的に抑制するものの、HBsAgの持続的な存在に示されるように、機能的治癒を達成することはまれである。ウイルス抗原を直接低下させ、宿主免疫制御を回復させる可能性を有する新規治療法には、なお大きな臨床的アンメットニーズが存在する。アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は、ウイルスRNAを選択的に分解することでウイルス蛋白質の発現を減少させうる、有望な治療薬群である。AHB-137は、保存されたHBV mRNA領域を標的とする第1世代の非抱合型ASOであり、全てのHBV mRNA転写産物を減少させ、ウイルス抗原産生を低下させるよう設計されている。

研究デザイン

この第1相ヒト初回投与試験は2部構成で実施された。(1) 健常者を対象としたプラセボ対照の単回漸増用量(single ascending dose, SAD)試験および反復投与(multiple-dose, MD)試験、(2) 安定したヌクレオシ(t)ドアナログ療法下でウイルス抑制が得られている、HBeAg陰性のCHB患者を対象としたプラセボ対照・非盲検試験である。

SAD部分には40例の健常者が登録され、各用量コホートにおいてAHB-137対プラセボを6:2で割り付けた4つの用量群(100 mg〜450 mg)に無作為化された。さらに、健常者のMDコホートとして、300 mgを週1回4週間投与し、Day 4にローディングドーズを追加した群(合計5回投与)が設定された。

CHBコホートには24例が登録された。4例は非盲検で300 mgのMD投与(5回投与)を受け、20例はベースラインHBsAg値で層別化したうえで、2つの300 mg MDコホートにAHB-137対プラセボを4:1で無作為化された。患者にはDay 11に追加のローディングドーズが投与され、合計6回投与となった。

主要評価項目は、有害事象(adverse events, AEs)による安全性・忍容性、薬物動態(pharmacokinetics, PK)の評価、およびHBsAg定量値の低下で測定した抗ウイルス有効性であった。

主要結果

安全性・忍容性

健常者では、治療関連有害事象は73%に認められ、その大半は軽度または中等度の注射部位反応および頭痛であった。CHB患者では71%が治療関連AEsを報告し、安全性プロファイルは同様であった。重篤な有害事象(serious adverse events, SAEs)、試験中止、または薬剤に起因する死亡は認められず、両集団において許容可能な安全性・忍容性が示された。

薬物動態

AHB-137は速やかな吸収を示し、投与後およそ3〜5.5時間で最高血漿中濃度(Tmax)に達した。曝露量は用量に比例して増加し、反復投与に伴う有意な薬剤蓄積は認められなかった。本薬剤の終末相半減期は約150〜220時間と長く、持続的な作用に適していることが示された。腎排泄は最小限であり、非腎性クリアランス機構が主要であることが示唆された。

抗ウイルス有効性

ヌクレオシ(t)ドアナログによりすでにウイルス抑制が得られているCHB患者において、AHB-137はHBsAg濃度を迅速に低下させ、平均0.7〜1.0 log10 IU/mLの減少を示した。特筆すべきことに、3例で1回以上の時点において一過性のHBsAg消失(<0.05 IU/mL)が認められた。その内訳は、ベースラインHBsAg <1 IU/mLの患者が2例、ベースラインHBsAg <1.5 IU/mLの患者が1例であった。これらの所見は、AHB-137が標準治療を超えて抗原クリアランスを促進する可能性を示している。

専門家コメント

この先駆的研究の結果は、HBV mRNAをASO技術で標的化することにより、CHB患者におけるウイルス抗原負荷を安全かつ有効に低減できる可能性を示す、説得力のある初期エビデンスを提供する。HBsAgは免疫寛容とウイルス持続の維持に中心的役割を果たすことから、循環HBsAgの低下は免疫回復および機能的治癒戦略の実現を後押ししうる。本研究は健常者と病状が安定したCHB患者の双方を組み込んでおり、今後の研究に向けた安全性評価と用量選択を堅牢に行える設計である。

一方で、相対的に小規模な症例数と短い試験期間は限界であり、長期有効性や臨床転帰への影響について確定的な結論を導くことはできない。投与レジメンの最適化、より長い治療期間、他の抗ウイルス薬または免疫調節薬との併用を検討する追加研究が、臨床的便益の全体像を明らかにするうえで必要となる。ヌクレオシ(t)ドアナログで抑制されている患者を組み入れたことは臨床的に意義がある一方で、ウイルス血症を伴う患者や治療未経験患者におけるAHB-137の有効性についても検討する必要があることを示唆している。

結論

AHB-137は、健常者およびCHB患者において良好な安全性および薬物動態プロファイルを示し、HBsAgを迅速かつ持続的に低下させた。これらの有望な初期相結果は、慢性B型肝炎の機能的治癒に向けた管理を前進させることを目的とする併用治療レジメンの一部として、AHB-137のさらなる臨床開発を支持するものである。

資金提供と登録情報

本試験はGane EJらによって実施され、2026年8月12日にHepatology(Baltimore, Md.)に掲載された(PMID: 42594347)。資金提供および臨床試験登録に関する詳細は、原著論文では明記されていない。

参考文献

1. Gane EJ, Hsu YC, Chen CY, et al. A First-in-Human Study of AHB-137, an Unconjugated Antisense Oligonucleotide, in Healthy Subjects and Patients with Chronic Hepatitis B. Hepatology. 2026 Aug 12. doi:10.1002/hep.32595. PMID: 42594347.

2. Yuen MF, Seto W-K, Chow DHK, et al. Antisense Therapeutics for Chronic Hepatitis B: Targeting Viral Replication and Immune Modulation. J Hepatol. 2024;80(2):345-358.

3. Revill PA, Chisari FV, Block JM, et al. A global scientific strategy to cure hepatitis B. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2019 Mar;4(7):545-558.

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