緑内障における視覚電気生理学:2026年AAO報告の要点

はじめにと背景

緑内障は、世界的に不可逆的な視力低下の主要な原因の一つです。臨床現場では、緑内障性視神経障害の検出および経過観察のために、構造的画像検査(光干渉断層計, OCT)、視野検査(標準自動視野計測, SAP)、および臨床診察を組み合わせて用います。視覚電気生理学――網膜および視覚伝導路機能を客観的に評価する検査――は、網膜神経節細胞(retinal ganglion cell, RGC)の機能障害を視野検査より早期に捉える、あるいは判定困難な症例を明確化する補助的手段として、長年検討されてきました。

2026年6月、American Academy of Ophthalmology(AAO)は「Visual Electrophysiology for the Diagnosis of Glaucoma」という重点的なエビデンスレビューを公表しました。本報告は、2025年8月までの文献を系統的に評価し、電気網膜図(electroretinography, ERG)の各種指標および視覚誘発電位(visual evoked potentials, VEP)が緑内障診断においてどの程度有用かを統合的に検討したものです。AAOパネルは、視覚電気生理学は有望であるものの、現時点では日常臨床での routine use には適さないと結論づけました。本稿では、その報告の背景、主要推奨、エビデンスの強さ、実臨床への示唆、ならびに今後の課題を要約します。

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