ハイライト
- 無作為化試験では、IA2~IB1期子宮頸がんに対する単純子宮全摘術と骨盤リンパ節郭清、および根治的子宮全摘術と骨盤リンパ節郭清の生存率に有意な差は見られませんでした。
- 単純子宮全摘術では、術中・術後の合併症が少ない可能性があります。
- 短期的な性的機能と生活の質は、単純子宮全摘術の方が良好であることが示されました。
- 単純子宮全摘術は特定の患者にとって費用対効果が高い可能性がありますが、証拠の確実性は低~中程度です。
背景
子宮頸がんは、特に低所得国や中所得国において重要な世界的健康問題であり続けています。早期の病期では、根治的子宮全摘術が長年標準治療となっていますが、広範囲の組織切除(側葉や膣の一部)により大きな合併症が生じることがあります。早期の病期(FIGO 2019年版 IA2~IB1期)で側葉への浸潤リスクが低い女性では、単純子宮全摘術と骨盤リンパ節郭清により、合併症を最小限に抑えながら腫瘍学的な安全性を維持できる可能性があります。
研究デザイン
このCochrane系統的レビューでは、IA2~IB1期子宮頸がんの女性を対象に、単純子宮全摘術と骨盤リンパ節郭清を根治的子宮全摘術と骨盤リンパ節郭清と比較した無作為化対照試験を評価しました。文献検索はCENTRAL、MEDLINE、Embase、Web of Science、PubMed、試験登録データベースを対象とし、最終的な検索は2025年3月19日に行われました。対象は、適切な病期定義を持つ無作為化試験に限定されました。主な評価項目には、全原因死亡率、総生存率(OS)、無病生存率(DFS)、がん関連死亡率、再発率、副作用、性的機能障害、費用対効果、生活の質が含まれました。
レビューには2つの試験が含まれ、合計740人の参加者が対象となりました。1つはブラジルでの小規模な単施設試験(40人)、もう1つは西ヨーロッパ、韓国、カナダを含む大規模な多施設試験(700人)でした。後者の大規模試験の参加者のうち75%が白人でした。
主要な知見
生存率
低確実性の証拠によれば、単純子宮全摘術と根治的子宮全摘術の間には、全原因死亡率(RR 1.12, 95% CI 0.44–2.89)、総生存率(HR 1.26, 95% CI 0.48–3.28)、無病生存率(HR 1.01, 95% CI 0.48–2.11)に有意な差は見られませんでした。がん関連死亡率のデータは非常に不確実でした(RR 3.64, 95% CI 0.61–21.92)。
再発
再発率には有意な差は見られませんでした(RR 1.56, 95% CI 0.73–3.35;低確実性の証拠)。
安全性と合併症
中程度の確実性の証拠によれば、副作用は単純子宮全摘術群で少ないことが示され(RR 0.82, 95% CI 0.70–0.97)、術中・術後の安全性に実質的な利点があることが示唆されました。
生活の質と性的機能
特定のフォローアップポイントでは、単純子宮全摘術を受けた女性が根治的子宮全摘術を受けた女性よりも、より良い性的機能と生活の質スコアを報告しました。これらの結果は、測定方法が一貫性に欠けており、変動性があるため注意が必要です。
費用対効果
収録された試験の経済分析では、単純子宮全摘術が費用対効果の高い戦略として示されました。
専門家のコメント
これらの知見は、選択的に早期子宮頸がん患者の手術治療をエスカレーションしない傾向を支持しています。同等の腫瘍学的制御を維持しながら手術による合併症を軽減する可能性は、個人化医療の原則に沿っています。ただし、証拠の確実性が低~中程度であることから慎重さが必要であり、特に研究対象者の地理的および人種的多様性が限られていることを考慮する必要があります。現在の臨床ガイドラインは、選択的な患者に対して単純子宮全摘術をオプションとして取り入れる可能性がありますが、多様な集団を対象としたさらなる試験と堅固な生活の質評価が先行すべきです。
結論
FIGO IA2~IB1期子宮頸がんかつ側葉への浸潤リスクが低い女性では、単純子宮全摘術と骨盤リンパ節郭清が根治的子宮全摘術と同様の生存率と再発率を提供しつつ、副作用を軽減し、短期的な生活の質を改善する可能性があります。利用可能な証拠は、患者選択とインフォームドコンセントに注意を払いつつ、多学科的な治療計画において単純子宮全摘術を慎重に検討することを支持しています。
資金と登録
このレビューには特定の資金提供はありませんでした。Cochraneプロトコル登録DOI: 10.1002/14651858.CD012335。
参考文献
Kietpeerakool C, Rattanakanokchai S, Shawky M, Morrison J. Simple hysterectomy with pelvic lymphadenectomy versus radical hysterectomy with pelvic lymphadenectomy for women with stage IA2-IB1 cervical cancer. Cochrane Database Syst Rev. 2025 Oct 15;10(10):CD012335. doi: 10.1002/14651858.CD012335.pub2. PMID: 41090469; PMCID: PMC12522187.

