Etrasimodによる好酸球性食道炎の管理:VOYAGE第2相試験の有望な結果

Etrasimodによる好酸球性食道炎の管理:VOYAGE第2相試験の有望な結果

研究背景と疾患負担

好酸球性食道炎(EoE)は、食道の好酸球優位性炎症を特徴とする慢性の免疫介在性炎症性疾患で、嚥下困難や食物嵌頓などの症状を引き起こします。現在、有効な治療法が限られているため、医療ニーズが満たされておらず、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、トピカルコルチコステロイド、食道拡張術などのオフラベル治療に頻繁に依存しています。基礎となる免疫経路を標的とした新しい治療薬の開発が急務であり、長期的な疾患制御と患者の生活品質向上に貢献することが期待されています。

Etrasimodは、経口1日1回投与の選択的スフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体1、4、5のモジュレーターです。リンパ球の移動と免疫活性を調節することで、他の免疫介在性炎症性疾患においても効果が示されています。EoEの免疫病理学に基づき、S1P経路の選択的標的化は有望な治療アプローチとなります。

研究デザイン

VOYAGE試験は、オーストラリア、ベルギー、スペイン、スイス、アメリカ合衆国の64カ所で実施された多施設共同、二重盲検、プラセボ対照の第2相臨床試験でした。対象は、18歳から65歳までのEoE既往歴があり、基線時に組織学的に活動性疾患を呈していた成人でした。

参加者は3:3:2の割合で、経口Etrasimod 2 mg、Etrasimod 1 mg、またはプラセボを1日1回、24週間(プラセボ対照期間)投与されました。主な層別要因には、食道拡張の既往歴と並行して行われるPPI使用が含まれました。この期間後、参加者は割り当てられた用量を継続するか、当初プラセボ群にいた場合は2 mgまたは1 mgのEtrasimodに1:1で再ランダム化され、さらに28週間の延長期間が設定されました。

主要評価項目は、16週時点での食道最大好酸球数(PEC)の中央値変化率でした。安全性と忍容性は52週間まで評価されました。

主要な知見

2020年12月15日から2022年5月27日の間に、108人の患者が無作為化されました:Etrasimod 2 mg群41人、Etrasimod 1 mg群39人、プラセボ群28人。性別の分布は均衡していました。完全解析セットと安全性集団には、少なくとも1回の試験薬投与を受けた全患者が含まれました。

16週時点で、Etrasimod 2 mg群では、プラセボ群の-21.5%(四分位範囲[IQR] -57.2〜55.4)に対して、PECの中央値減少率が-58.4%(IQR -86.2〜-26.3)と有意に示されました(p=0.010)。1 mg群では、中央値減少率が-39.4%(IQR -71.1〜79.0;p=0.29 vs プラセボ)と非有意でした。注目すべきは、79%の患者が二重盲検期間を完了し、延長期間に入り、52週間の継続的なEtrasimod治療による組織学的改善が持続したことです。

安全性に関しては、胃腸系の副作用がすべての群で最も頻繁に報告されましたが、一般的には軽度または中等度の重症度でした。徐脈は少数の患者(Etrasimod 2 mg群5%、プラセボ群4%)にみられ、軽度から中等度で中断につながらなかった。重要なことに、試験薬に関連する重大な副作用や死亡例は報告されませんでした。

内視鏡所見は組織学的改善を裏付け、特に食道拡張を受けていない患者では症状の緩和が特に認められました。

専門家のコメント

VOYAGE試験は、EtrasimodによるS1P受容体調節がEoEの好酸球性炎症を効果的に軽減することを強力に示しています。2 mg用量で観察された用量依存性の効果は、適切な受容体エンゲージメントの重要性を強調しています。1年間の持続的な組織学的および内視鏡的改善は、対症療法を超えた疾患修飾の可能性を示唆しています。

現在の治療法がしばしば効果が不十分であるか、重大な安全性の懸念があることを考慮すると、Etrasimodは免疫病態生理学を直接標的とする新たなメカニズムを導入しています。試験の比較的小規模なサンプルサイズや特定のサブグループ分析がさらなる評価を必要とするものの、S1Pシグナル伝達調節に関する生物学的理屈と前臨床データとの結果は一致しています。

この試験は、EoE治療開発におけるS1P受容体調節剤の先駆けとなり、確認データを待つことなくガイドラインの更新を促進する可能性があります。

結論

Etrasimodは、好酸球性食道炎の成人に対する有望な新しい経口治療オプションであり、52週間の良好な安全性とともに、食道好酸球性炎症の有意かつ持続的な軽減と内視鏡的改善を示しています。VOYAGE第2相試験は、S1P経路がEoEの治療標的として有効であることを検証する重要な一歩であり、この免疫介在性疾患における重要な未満足な医療ニーズに対処しています。今後の第3相試験でこれらの結果を確認し、長期的な臨床アウトカムと症状制御をさらに探索することが望まれます。

参考文献

1. Dellon ES, Collins MH, Bredenoord AJ, Philpott H, Biedermann L, Dulcine M, Nguyen-Cleary T, Su C, Yu J, Tan H, Cataldi F, Wu J, Wang W, Clax P, Woolcott JC, Hirano I. Etrasimod as a treatment for eosinophilic oesophagitis (VOYAGE): a double-blind, placebo-controlled, randomised, phase 2 trial. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2025 Jul;10(7):622-633. doi: 10.1016/S2468-1253(25)00062-7.

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