パンデミックによる医療の中断が短期がん生存率の大幅な低下と1万7千人の余剰死亡と関連

パンデミックによる医療の中断が短期がん生存率の大幅な低下と1万7千人の余剰死亡と関連

ハイライト

COVID-19パンデミック最初の2年間に100万人以上の患者ががんと診断された包括的な分析では、腫瘍学的なアウトカムに深刻な変化が見られました。主な知見は以下の通りです。

  • 2020年と2021年の早期および進行期のがん診断における1年間原因別生存(CSS)の絶対的な低下。
  • 診断後1年内に1万7,390人の余剰がん関連死亡が発生し、パンデミック前の予想死亡率に基づく13.1%の増加。
  • 最も顕著な生存率の低下は、高齢者(65歳以上)と少数民族・民族背景を持つ人々で見られました。
  • 部位別の分析では、早期食道がんと大腸がん、進行期前立腺がんにおいて著しい生存率の低下が見られました。

背景:オンコロジーへのパンデミックの影

COVID-19パンデミックにより、世界中の医療システムの根本的な再編成が必要となりました。米国では、この移行により選択的手術の延期、ルーチンのがんスクリーニングの一時停止、感染の恐怖による患者行動の変化が広範囲にわたって起こりました。以前の研究では、がん診断の遅延やその後の「ステージ移行」が報告されていましたが、これらの中断が短期生存に及ぼす直接的な影響は、今回の研究で初めて具体的に評価されました。

がん生存は、診断だけでなく、手術、放射線治療、全身療法などの介入の継続性を反映するものです。パンデミックが病院のリソースを圧迫し、治療プロトコルが中断されたことで、臨床界は「尾」の形で増加した死亡率を予測していました。本研究は、危機の最初の24ヶ月間にその影響の大きさを理解するために必要な実証的根拠を提供しています。

研究デザインと方法論

この人口ベースのコホート研究では、米国の約37%の人口をカバーするSurveillance, Epidemiology, and End Results 21 Registries (SEER-21) データベースのデータが使用されました。研究者は、2015年1月1日から2021年12月31日にかけて侵襲性がんと診断された個人の生存アウトカムを分析しました。

研究コホートは、パンデミック前の期間(2015年~2019年)とパンデミック年(2020年と2021年)に診断された2つのグループに分かれました。主要エンドポイントは、診断時のステージ別に層別化された1年間原因別生存(CSS)でした。2020年と2021年の観察された生存率を、直前の5年間の既知の傾向と比較することで、絶対生存率の低下とパンデミック時代の中断に起因する余剰死亡数を推定しました。

主な知見:生存率の量的な低下

本研究には、パンデミック最初の2年間にがんと診断された1,008,012人の患者が含まれました(2020年473,781人、2021年534,231人)。年齢層は両年とも概ね一貫しており、患者の約51%が65歳以上で、人種構成は白人(63-64%)、ヒスパニック(15-16%)、黒人(11.5-11.7%)など多様でした。

ステージ別の生存率低下

データは、生存率の低下が進行期のがん患者に限定されなかったことを示しています。早期診断では、2020年には1年間CSSの絶対低下が-0.44パーセンテージポイント(95%信頼区間、-0.54から-0.34)、2021年には-0.27パーセンテージポイント(95%信頼区間、-0.37から-0.16)でした。進行期診断では、2020年には-1.34パーセンテージポイント(95%信頼区間、-1.75から-0.93)、2021年には-1.20パーセンテージポイント(95%信頼区間、-1.69から-0.71)と、さらに大きな低下が見られました。

人的コスト:1万7,390人の余剰死亡

最も注目すべき知見は、累積的な死亡率の影響です。研究では、生存率の低下により、診断後1年以内に1万7,390人ががん関連死亡が発生したと推定されています。これは13.1%の死亡率の増加を示し、診断時のがんのステージに関係なく、医療の中止が深刻な結果をもたらしたことを強調しています。

人口統計学的および部位別の脆弱性

影響はすべてのグループに等しく及ばず、65歳以上の患者とアメリカ先住民、アラスカ先住民、アジア人、または太平洋島嶼出身の患者では、2020年と2021年の両年にわたり進行期診断での絶対生存率の低下が1.00パーセンテージポイントを超えることが一貫して見られました。これらの知見は、パンデミックが既存の医療格差を悪化させた可能性があることを示唆しています。

部位別のデータでは、特定のがんがパンデミックの中断に特に敏感であることが明らかになりました。早期食道がんでは、2020年と2021年にそれぞれ-3.89と-3.67パーセンテージポイントの生存率低下が見られました。早期大腸がんと進行期前立腺がんも著しい生存率の低下を示しており、これらの疾患はタイムリーな手術介入とルーチンのモニタリングに高度に依存しているためと考えられます。

専門家のコメント:中断の解釈

Burusらの知見は、公衆衛生危機の「付随的な被害」が危機自体と同じくらい致命的であるという重要な教訓を強調しています。診断時のステージを制御しても生存率が低下したことは、「遅い検出」だけではなく、診断後のケアの継続性の失敗が問題であったことを示唆しています。

メカニズムの洞察

これらの知見の生物学的な妥当性は、「治療までの時間」(TTT)指標に基づいています。腫瘍学では、補助化学療法や確定的手術の開始のわずかな遅延でも、微小転移の進行を許すことがあります。2020年と2021年には、ICUベッド不足により多くの患者が手術の延期を余儀なくされたり、ウイルス流行時に免疫抑制を避けるために全身療法が延期されたりしました。また、早期大腸がんと早期食道がんの1年間CSSの低下は、手術マージンとリンパ節収集が重要である疾患であり、パンデミックピーク時の手術品質や術後管理の潜在的な変動を示唆しています。

研究の強みと限界

本研究の大きな強みは、米国のがんの全体像を高品質な人口ベースで提供するSEER-21データベースの使用です。ただし、限界もあります。データには、各個々のケア中断の正確な原因(例えば、病院の方針、患者のCOVID-19への恐怖、または直接的なCOVID-19感染)が明確に詳細に記載されていません。また、原因別生存はがん死亡に焦点を当てていますが、COVID-19の病態とがんの進行との相互作用は、これらの結果に影響を与える複雑な変数であるかもしれません。

結論:将来の医療レジリエンスへの影響

このコホート研究は、2020年と2021年にがんと診断された患者の短期生存がCOVID-19パンデミックによって著しく損なわれたことを確認しています。予想以上に1万7,000人以上が生命を失ったことは、将来の緊急事態において腫瘍学的なサービスを維持する必要性を明確に示しています。今後、医療システムは、遠隔医療、分散型臨床試験、手術用の保護された「冷凍サイト」の利用など、救命のがん治療が再び公衆衛生危機によって脇に追いやられないようにするための「レジリエンスのある」がん経路の開発を優先する必要があります。

参考文献

Burus T, Damgacioglu H, Huang B, Tucker TC, Deshmukh AA, Lang Kuhs KA. Survival of Patients Diagnosed With Cancer During the COVID-19 Pandemic. JAMA Oncol. 2026 Feb 5:e256332. doi: 10.1001/jamaoncol.2025.6332. Epub ahead of print. PMID: 41642595; PMCID: PMC12878639.

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