新型コロナウイルス感染症対策が幼児期の溶連菌および呼吸器ウイルスへの免疫に与える影響

新型コロナウイルス感染症対策が幼児期の溶連菌および呼吸器ウイルスへの免疫に与える影響

はじめに

新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、社会的距離の確保、マスク着用、ロックダウンなどの非医薬品介入(NPI)の前例のない世界的実施を促しました。これらの措置は主にSARS-CoV-2の感染拡大を抑制することを目的としていましたが、新型コロナウイルスの拡大を抑制する効果とともに、他の感染症の疫学も大幅に変化させました。特に、2022年から2023年にかけて、欧州の子供たちにおける侵襲性溶連菌感染症の増加が、この年齢層の免疫未経験と脆弱性についての懸念を引き起こしています。病原体の循環、免疫獲得、疾患再発の間の関連メカニズムは不明瞭でした。

研究デザインと方法

この横断的、多施設研究では、10カ国にわたる欧州の病院から、0~4歳で呼吸器感染症が疑われる子供と非感染制御群を対象に募集しました。データ収集は2つの段階で行われました:NPI以前の期間(2016年9月から2020年3月)とNPI以後の期間(2020年4月から2023年7月)。喉頭拭い液は、分子アッセイによりS. pyogenes、RSV、インフルエンザウイルス、風邪コロナウイルス、SARS-CoV-2などの細菌およびウイルス病原体の検出に使用されました。一部の子供たちの血清サンプルは、S. pyogenesおよび呼吸器ウイルスに対する免疫グロブリンG(IgG)反応性を特定抗原および株を対象とした免疫アッセイ技術により分析されました。主要評価項目は、時間経過による病原体検出率と抗体レベルの変化でした。

主要な知見

1,942人の子供たちの解析結果では、NPIのピーク時期(2020年3月から2021年7月)にS. pyogenes、RSV、風邪コロナウイルス、インフルエンザウイルスの検出率が大幅に低下したことが明らかになりました。特に、この期間中にS. pyogenesに陽性となる子供の割合が急激に減少しました。同時に、3~4歳児のS. pyogenesおよびRSVに対する血清IgG抗体レベルは、NPI導入後、NPI以前と比較して有意に低かった(S. pyogenes:導入前の相対単位中央値0.35 対 導入後の0.13、P=0.007;RSV:導入前のメソスケール単位中央値141.8 対 導入後の49.6、P<0.001)。興味深いことに、0~2歳児やインフルエンザウイルス、SARS-CoV-2に対する抗体レベルには有意な違いが観察されませんでした。これは、病原体への暴露が減少したことによる年齢特異的な影響を示唆しています。これらの知見は、老齢の幼稚園児におけるこれらの病原体に対する免疫獲得の遅れ、約1年分に相当することが示唆されています。

議論と意義

NPI導入後に3~4歳児のS. pyogenesおよびRSVに対する血清抗体が減少していることは、自然暴露の減少と免疫成熟の遅延を示しています。この免疫未経験は、2022年から2023年にかけて記録された重篤なS. pyogenes感染症の増加の背景にある可能性があります。データは、循環の減少が免疫プリミングを制限し、再曝露時の感受性を高めるという仮説と一致しています。興味深いことに、0~2歳の子供たちは、基線での曝露が限られており、免疫発達の段階にあるため、有意な抗体変化を示しませんでした。

本研究の制限点には、横断的研究デザインであることから個人の免疫経過を直接評価できないこと、地理的なNPI遵守状況や病原体の循環の違いがあること、血清学的評価が断面的なものであることが挙げられます。ただし、これらの知見は、パンデミック制限が緩和され、呼吸器病原体の循環が再開されるにつれて、免疫動向を監視し、予防接種戦略を指導する重要性を強調しています。

結論

本研究は、新型コロナウイルス感染症のNPIが3~4歳児のS. pyogenesおよびRSVに対する免疫獲得に著しく、年齢特異的な遅延をもたらしたことを示しています。免疫成熟の遅延は、子供たちにおける重篤な侵襲性S. pyogenes感染症の最近の増加を説明する可能性があります。これらの知見は、継続的な警戒、対象別公衆衛生対応、そして将来のアウトブレイクを軽減するためのワクチン政策の再評価の必要性を強調しています。

資金源と倫理的配慮

本研究は、欧州の公衆衛生機関の支援を受け、小児研究の倫理原則に基づいて実施されました。研究全体でデータプライバシーと同意を得ることを維持しました。

参考文献

1. Dokal K, et al. Immunity to Streptococcus pyogenes and Common Respiratory Viruses at Age 0 to 4 Years After COVID-19 Restrictions. JAMA Netw Open. 2025;8(10):e2537808. doi:10.1001/jamanetworkopen.2025.37808.

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