ハイライト
この研究の2〜4つの主要なハイライトは以下の通りです:
1. denovoSkin™は、従来の基準である厚さ分割皮膚移植(STSG)と比較して、7.4倍高い皮膚拡大比を達成し、ドナー部位採取の必要性を大幅に削減しました。
2. 1年後のフォローアップデータでは、denovoSkin™で治療された領域では臨床的に有意義な瘢痕がほとんど見られませんでした。一方、STSGコントロール領域では主に肥厚性瘢痕が発生しました。
3. バイオエンジニアリング皮膚移植の安全性プロファイルは、従来の方法と同等であり、実験的な治療に関連する2つの軽微な自己解消型の副作用のみが確認されました。
背景:やけど再建の持続的な課題
重度のやけど、特に深部部分厚さおよび全層損傷の管理において、手術の標準的な治療法は長年にわたり自家厚さ分割皮膚移植(STSG)でした。効果的であるものの、STSGには2つの主要な臨床的なボトルネックがあります:大量のやけどの場合の健康なドナー部位の有限性と、機能障害を引き起こす高頻度の肥厚性瘢痕の発生です。これらの瘢痕はしばしば機能的な拘縮、慢性痛、および患者の心理的な苦痛を引き起こします。
組織工学は、これらの制限に対処するために、患者の小さな生検から体外で拡大できる表皮・真皮の代替物質を作成することを目指してきました。denovoSkin™は、この分野での画期的な進歩であり、表皮と真皮の両成分を含む自家バイオエンジニアリング皮膚移植製品です。この前向き、無作為化、対照群設置の多施設第IIb相臨床試験は、この技術が現在の基準となる治療法に対する有効かつ優れた代替手段となり得るかどうかを評価するために設計されました。
研究デザインと方法論
試験(NCT03227146)は、スイス、オランダ、イタリアの4つの専門やけどセンターで実施されました。研究対象者は、手術が必要な深部やけどを持つ21人の患者(12歳以上の青少年および成人)でした。
厳格な同一患者内無作為化デザインを使用して、各患者の2つの類似した皮膚欠損(最大98平方センチメートルずつ)を特定しました。1つの部位は実験的なdenovoSkin™移植を受け、もう1つの部位は従来のSTSG(対照群)を受けました。このデザインは、個々の患者の治癒特性と全身要因を効果的に制御しました。
主要な有効性エンドポイントは、拡大比(元の生検サイズと移植後4週間の『着床』成功領域の比率)として定義されました。副次的エンドポイントには、完全な創傷閉鎖までの時間、安全性評価、および12ヶ月間の長期瘢痕品質(標準的な臨床スケールを使用)が含まれました。解析は、修正されたフル解析セット(mFAS)とプロトコル適合セット(PPS)の両方で行われました。
結果:拡大比と瘢痕品質の再定義
2018年から2022年の間に21人の患者が登録され、13人がPPS解析のためのフルプロトコルを完了しました。これらの結果は再生医療における重要なマイルストーンを代表しています。
主要な有効性:拡大比の優位性
最も目立つ発見は、拡大可能性の大きな違いでした。mFASでは、denovoSkin™は平均拡大比10.76(SD 6.03)を示し、STSGは1.70(SD 0.68)でした。統計的には、denovoSkin™の拡大比は対照群の7.41倍大きく(p < 0.001)でした。これは、denovoSkin™のバイオエンジニアリングプロセスを通じて処理された場合、大幅に少ないドナー生検がより広い創傷面積をカバーできることを確認しています。これは、広範囲の体表面積やけどを持つ患者にとって非常に重要な要素です。
安全性と耐容性
安全性は12ヶ月間にわたって広範囲に監視されました。164件の重篤な有害事象(SAEs)が記録されましたが(これはやけど損傷の深刻さを反映している高数値)、その大部分は実験的な移植とは無関係でした。denovoSkin™に関連する2件の有害事象(局所血腫と部分的皮膚壊死の焦点領域)が確認されましたが、いずれも自発的に解決し、追加の手術介入を必要としませんでした。全身的な安全性の懸念や免疫拒絶は観察されず、自家製剤の生体適合性が確認されました。
長期アウトカム:瘢痕と美容結果
患者にとって最も臨床的に意味のある結果は、治癒した皮膚の品質でした。3ヶ月目までに、実験群と対照群の両部位で完全な上皮化が達成されました。しかし、成熟過程が12ヶ月目に向かって進行するにつれて、差異が顕著になりました。denovoSkin™で治療された領域では、臨床的に有意義な瘢痕がほとんど見られませんでした。対照的に、STSGで治療された領域では、隆起、紅色、弾力性の喪失を特徴とする肥厚性瘢痕が主に発生しました。これは、やけど手術のランダム化比較試験において前例のない結果であり、バイオエンジニアリング真皮層の包含がより自然な組織リモデリングを促進することを示唆しています。
専門家コメント:組織工学のパラダイムシフト
臨床的には、これらの結果はやけど手術の『聖杯』を解決しています:最小限のドナー部位の犠牲と優れた美容・機能的結果で永久的な創傷被覆を達成することです。7.4倍の拡大優位性は、ドナー皮膚が希少な重大なやけどを管理する外科医にとってゲームチェンジャーです。
メカニズム的には、denovoSkin™の成功はその表皮・真皮構造に由来すると考えられます。過去数十年間に使用されていた単純な表皮シートとは異なり、脆弱で瘢痕化しやすいdenovoSkin™には構造化された真皮サcaffoldが存在し、過剰なコラーゲン沈着を防ぐために必要な機械的安定性とシグナル伝達環境を提供します。
ただし、研究の制限点に注意する必要があります。第IIb相試験に適切なサンプルサイズであるとはいえ、依然として比較的小さいです。さらに、自家バイオエンジニアリング皮膚の複雑な製造プロセス(生検の輸送、実験室での拡大、専門的な取り扱い)は、外傷センターでの広範な採用前に解決すべき物流とコストの課題を呈しています。
結論
この1年間の第IIb相試験の結果は、denovoSkin™が深部やけどに対する厚さ分割皮膚移植の安全で効果的な代替手段であることを確立しています。大幅に優れた拡大比と肥厚性瘢痕のリスクのほぼ完全な排除により、この技術はやけどリハビリテーションの新たな地平を提供します。大規模な第III相試験に向けて進む中、製造プロセスのスケーラビリティの最適化と、この高度な治療法を標準的な臨床ワークフローに組み込むことが焦点となるでしょう。
資金提供と試験登録
この研究は、Wyss Zurich Translational CenterとCUTISS AGによって支援されました。試験はclinicaltrials.govにNCT03227146の識別子で登録されています。
参考文献
Meuli M, Schiestl C, Hartmann-Fritsch F, et al. Safety and efficacy of bio-engineered, autologous dermo-epidermal skin grafts in adolescent and adult burn patients: 1-year results of a prospective, randomized, controlled, multicenter phase IIB clinical trial. EClinicalMedicine. 2025 Nov 28;90:103665. doi: 10.1016/j.eclinm.2025.103665. PMID: 41399471.

