ハイライト
- 時間制限摂食(TRE)は、16週間でメタボリック機能障害関連性脂肪肝疾患(MASLD)患者の肝脂肪症を有意に軽減します。
- TREは、体重減少、体組成、代謝パラメータに関して従来のカロリーリストリクション(CR)と同様の効果を示します。
- 重大な有害事象は報告されておらず、TREはMASLD管理の安全で実践的な飲食戦略であることが示唆されています。
研究背景
メタボリック機能障害関連性脂肪肝疾患(MASLD)、以前は非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)として知られていましたが、肥満と代謝症候群の増加とともに世界的な公衆衛生問題となっています。過剰な肝脂肪蓄積とインスリン抵抗性や全身炎症を伴うことが多く、MASLDは進行性の肝線維症、肝硬変、心血管疾患のリスクを高めます。生活習慣の介入がMASLD管理の中心であり、体重減少が肝脂肪症の軽減と代謝健康の改善に効果的であることが証明されています。
従来のカロリーリストリクション(CR)は、肝脂肪の減少と関連する代謝パラメータの改善に効果的であることが示されています。しかし、長期的なカロリー制限への順守は困難であることがあります。時間制限摂食(TRE)は、特定の時間枠内で食物摂取を制限する断続的断食の一種で、規定されたカロリー制限なしで体重管理、インスリン感受性、体組成の改善を可能とする持続可能なライフスタイルの変更として最近注目を集めています。
TREの他の集団での有望な代謝効果にもかかわらず、MASLD患者におけるその有効性と安全性に関する証拠は限定的です。この無作為化比較試験は、標準治療と従来のカロリーリストリクションと比較して、過体重または肥満で既存のMASLDを持つ患者に対するTREが有効な飲食介入となり得るかどうかを明確にする目的で行われました。
研究デザイン
これは、16週間、単施設、無作為化比較試験で、肥満または過体重でMASLDと診断された337人の成人患者が対象となりました。参加者は1:1:1の比率で3つの介入グループに無作為に割り付けられました:
- 標準治療(SOC):特定の飲食変更プロトコルなしで一般的な生活習慣アドバイスを受けました。
- カロリーリストリクション(CR):体重減少を達成するために毎日のカロリー摂取量を削減することを目的とした低カロリー飲食が処方されました。
- 時間制限摂食(TRE):特定の時間枠内(例:8〜10時間)での毎日の食物摂取を制限するように指示され、明示的なカロリー制限はありませんでした。
主要評価項目は、MRIに基づくプロトン密度脂肪分数(MRI-PDFF)により定量的に測定される肝脂肪症の改善でした。二次エンドポイントには、肝硬度(線維症を反映)、体組成(体重、ウエスト周径、脂肪質量)、脂質プロファイル、血糖ホメオスタシス、睡眠品質の変化が含まれました。安全性と有害事象は全体的に監視されました。
主要な結果
333人の参加者がフル分析セットに基づいて研究を完了しました(SOC 113人、CR 110人、TRE 110人)。基線特性は各グループ間でバランスが取れていました。16週間後、TREグループでは肝脂肪症が有意に軽減し、MRI-PDFFが25.8%減少しました。SOCグループでは最小限の変化(0.7%)が見られました。CRグループはTREとほぼ同じ減少率(24.7%)を示し、同等の効果が確認されました。
体組成に関しては、TREグループは体重、ウエスト周径、脂肪質量の有意な減少を達成し、SOCを上回り、CRと同様でした。これらの体型の改善は、血糖ホメオスタシスと脂質プロファイルの好ましい傾向と一致していましたが、TREとCRの間の差は統計的に有意ではありませんでした。
肝硬度の測定は、TREとCRの間に大きな違いは見られず、この短期間での線維症への影響は有意ではなかったことを示しました。睡眠品質の評価もTREとCRグループ間で同様でした。
特に重要的是、TRE介入は良好に耐えられ、重大な有害事象は報告されませんでした。これにより、この患者集団におけるTREの安全性が支持されました。
専門家コメント
この無作為化試験は、TREがMASLDの非薬物介入として有用であることを支持する強固な証拠を提供しています。肝脂肪の減少の程度は、従来のカロリーリストリクションによって達成されたものと並行しており、食事の摂取タイミングを変えるだけで肝脂質代謝とインスリン感受性を効率的に調整できる可能性があることを示唆しています。
メカニズム的には、TREは体内時計の調整を復元し、肝細胞の代謝柔軟性を向上させることで、脂肪合成を抑制し、脂肪酸の酸化を促進する可能性があります。16週間の期間は、線維症の進行に対する長期的な影響についての結論を制限しますが、承認されているMASLDの治療法が少ない現状とカロリーリストリクションの維持の難しさを考えると、これらの知見は臨床的に関連性があります。
特に、試験の単施設設計と参加者の盲検化の欠如はバイアスを引き起こす可能性があります。また、規定の摂食時間枠への順守と時間制御外の飲食パターンについては十分に議論されておらず、これらは実世界での応用において重要な要素です。将来の多施設試験と長期追跡、メカニズムバイオマーカーの使用により、TREのMASLDへの広範な適用可能性が明確になるでしょう。
結論
時間制限摂食は、MASLD患者の肝脂肪症を有意に軽減し、カロリーリストリクションと同等の代謝効果を提供する効果的で安全な飲食アプローチです。その実践的性質と耐容性により、厳格なカロリー制限よりも順守が向上する可能性があり、TREはMASLD管理の有望な戦略となります。これらの有望な結果は、持続的な効果、線維症への影響、包括的なケアプロトコルへの統合を確立するためのさらなる長期調査を必要とします。
資金源とClinicalTrials.gov
この試験はClinicalTrials.gov(NCT05579158)に登録されました。資金源は提供された要約には明記されていません。
参考文献
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