ハイライト
- FICUS試験では、16のスイスのICUで新しい看護師主導の多職種連携型家族支援介入を評価しました。
- 介入は、ICUケア全体に対する家族満足度(平均差2.39ポイント)を若干向上させました。
- 意思決定への家族参加やコミュニケーションの質の改善がより顕著でした。
- 介入を受けた家族は、認知的および感情的支援の大幅な向上を報告しました。
研究背景と疾患負担
重篤な患者の家族は、集中治療環境、感情的負担、そしてしばしば不十分な医療チームとのコミュニケーションによって深刻なストレスを感じます。コミュニケーションの不足と不十分な支援は、家族の不安、うつ病、または外傷後ストレス障害などの悪性心理的健康結果につながることがあります。家族中心のケアは、ガイドラインで推奨されている重要な要素であり、エンゲージメント、情報共有、および感情的支援を強調しています。しかし、これらの推奨にもかかわらず、看護師がリードする構造化された家族支援介入の影響を評価する高品質な実験データは依然として少ないです。ICU環境で家族満足度、コミュニケーションの質、および認知的・感情的ニーズを改善する介入を厳密にテストする緊急の未充足の需要があります。
研究デザイン
FICU(集中治療室での家族支援)試験は、スイスの12の病院にまたがる16の成人ICUで実施された実用的な多施設クラスター無作為化臨床研究です。単位は1:1の比率で最小化法を使用して無作為化され、バランスが確保されました。対象者は、少なくとも48時間ICUに入院した患者の家族で、2022年5月から2024年1月まで連続的に登録されました。研究は、看護師主導の多職種連携型複合家族支援介入と通常のICUケアを比較しました。
介入は、家族とのエンゲージメントと連携を行う専任の家族看護師役割を導入しました。この役割には、関係性に焦点を当てた心理教育的支援、一貫したコミュニケーション経路の確立、患者のICU滞在期間中の多職種連携の促進が含まれました。家族のアウトカムは、患者がICUから退院した後に評価されました。
主要なアウトカムは、Family Satisfaction with ICU調査(範囲:0〜100)によるICUケアに対する家族満足度でした。二次アウトカムは、Questionnaire on Quality of Physician-Patient Interaction(範囲:1〜5)による家族-医師間のコミュニケーションの質と、Family Perceived Support Questionnaire(範囲:14〜70)による認知的および感情的支援を含みました。分析には、個々の家族メンバーを推論の単位とする線形混合効果モデルが使用されました。
主要な知見
2057人の対象者から885人が同意し登録されました:介入群412人、対照群473人。参加者の中央年齢は54歳(四分位範囲42〜65)、パートナーは約48%、女性は64%でした。
介入は、全体的な家族満足度の主要アウトカムにおいて統計的に有意かつ小さな上昇を示しました。グループ間の平均差は2.39ポイント(95%信頼区間:0.31〜4.47;P = .02)でした。医療意思決定への参加に関する満足度は、直接的なケアに対する満足度よりも顕著に改善し、介入の家族エンゲージメントの効果を強調しました。
コミュニケーションの質は有意に改善し、平均得点差が0.37(95%信頼区間:0.16〜0.58;P = .002)増加しました。介入群の家族は、認知的および感情的支援が大幅に向上したと報告しました。平均差は8.71ポイント(95%信頼区間:4.71〜12.71;P < .001)でした。
クラスタと個人レベルの共変量を考慮した感度解析、および欠損データの多重補完は、これらの結果の堅牢性を強化しました。
介入は安全性上の懸念なく実施され、家族看護師が成功裏にICUチームに統合され、実現可能性が示されました。
専門家のコメント
この大規模で厳密なクラスター無作為化試験は、集中治療設定での看護師主導の多職種連携型家族支援介入を支持する貴重な証拠を提供しています。全体的な家族満足度への影響は小さく、これは患者家族の認識が患者の結果やICU文化など複雑な要因に影響を受けているためかもしれません。
共有意思決定とコミュニケーションの改善は、現在の集中治療実践における家族エンゲージメントと自律性の尊重に焦点を当てた重要性を反映しています。認知的および感情的支援の向上は、時間的な制約のある医療従事者が見落としがちなギャップを埋めるために、これらの専門的な看護師役割が重要であることを強調しています。
しかし、家族満足度スコアの小幅な上昇の臨床的重要性は慎重な解釈が必要であり、家族の心理的ストレスや親族のICU後の症候群などの長期的なアウトカムの調査が求められます。
スイスの多施設コンテキストにより、研究の一般化可能性が強化されていますが、ICUでの家族役割の文化的違いが世界的な適用性に影響を与える可能性があります。今後の研究では、コスト効果、介入の持続可能性、およびデジタルコミュニケーションプラットフォームとの統合を評価することが望まれます。
結論
FICUS試験は、成人ICUでの看護師主導の複合家族支援介入が、家族満足度のケアに対する小規模ながら統計的に有意な改善をもたらし、コミュニケーションの質と感情的・認知的支援を有意に向上させることを示しています。この介入モデルは、家族のストレスを軽減し、家族中心の集中治療を改善するための有効なアプローチを提供します。ただし、臨床的な影響の大きさは小さく、重篤な疾患に直面する家族に対する支援策の継続的な革新と評価の必要性が強調されています。
参考文献
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