ハイライト
- 注射剤から経口抗生物質への切り替えは、中等度リスクの重篤な細菌感染症(PSBI)を有する若年乳児において、48時間後に安全かつ効果的です。
- 早期退院は、死亡や重症感染の兆候などの不良臨床結果を増加させることなく、入院期間を短縮します。
- 低・中所得国においても、経口アモキシラリンの高い治療遵守率が達成され、実現可能性が確認されました。
- この戦略は、リソースに制約のある設定において、医療システムの能力を最適化し、院内感染のリスクを軽減する可能性があります。
研究背景
2ヶ月未満の若年乳児における重篤な細菌感染症は、世界中で新生児の罹患率と死亡率の主要な要因であり、特にアフリカとアジアの低資源地域で大きな影響を及ぼしています。管理ガイドラインでは、通常7〜10日の入院による静脈内抗生物質治療が推奨されていますが、長期の入院は家族と医療システムに大きな負担をもたらします。長期入院は院内感染のリスクを増加させ、家族との絆を阻害し、医療システムの能力を制限します。したがって、入院期間を安全に短縮するための戦略を探索することは、重要な未解決の課題です。中等度死亡リスクのPSBIは、特定の臨床症状があるが重症の急性疾患がない患者集団であり、注射剤から経口抗生物質への早期切り替えと早期退院が有益である可能性があります。
研究デザイン
このオープンラベル、多施設、個別無作為化比較試験は、バングラデシュ、エチオピア、インド、ナイジェリア、パキスタン、タンザニアで実施されました。対象者は、1〜59日の年齢で中等度死亡リスクのPSBIの兆候を呈する若年乳児でした。登録された全乳児は最初に、入院での注射用アムピシリンとジェナマイシンの治療を受けました。48時間後、PSBIの兆候がなくC反応性蛋白質テストが陰性の乳児は、以下のいずれかに無作為に割り付けられました。
- 介入群(外来):注射剤の投与を停止し、経口アモキシラリンを1日に2回5日間投与し、退院。
- 対照群:7日間の入院による注射剤の投与を継続。
主要評価項目は、15日目の死亡、4日目または8日目の重症病状の兆候、4日目または8日目の他の重篤な感染症の兆候、8日目の臨床的に重篤な感染症の兆候を含む階層的な複合測定値でした。外来群と入院治療との非劣性マージンは2%に設定されました。プロトコルに基づく分析で結果が評価され、治療遵守率は少なくとも80%以上の抗生物質投与を受けることで定義されました。
主要な知見
2021年6月から2024年8月の間に、6549人の対象者が48時間後に再評価され、5253人が無作為に割り付けられました:2635人が外来群、2618人が継続入院群。両群での治療遵守率は高かった(経口アモキシラリンが96.7%、継続入院注射剤が95.7%)。
プロトコルに基づく分析では、外来群の不良臨床結果率は4.0%(105/2616)、入院群は3.5%(90/2603)で、リスク差は0.56%(95% CI、-0.47% から 1.58%)で、事前に定義された非劣性マージン内に収まりました。死亡は両群で稀で同等(0.2% 対 0.3%)でした。ほとんどの悪性結果は、8日目に検出された臨床的に重篤な感染症の兆候によるものでした(外来群3.4% 対 入院群2.6%)。死亡以外の重大な有害事象は非常に稀で、入院群にのみ発生しました。
これらの知見は、経口抗生物質への切り替えと早期退院が、標準的な長期入院治療と比較して安全性や効果性を損なわないことを示しています。大規模なサンプルサイズと地理的な多様性は、類似の低資源設定への一般化可能性を強化します。
専門家のコメント
この画期的な試験は、新生児感染症管理における重要なギャップに対処し、長期入院を減らすための実現可能で臨床的に関連性のあるアプローチを厳密に評価しています。初期の注射剤治療後の経口アモキシラリンへの切り替えは、効果と安全性をバランスよく保ちながら、医療システムの最適化を実現します。以前の小規模な研究では経口投与への切り替えの安全性が示唆されていましたが、本試験の堅固なデザインと大規模な国際的なコホートは、ガイドラインへの統合を支持する決定的な証拠を提供しています。
主な制限点には、オープンラベルデザインがいくつかの結果評価に影響を与える可能性があることが含まれますが、死亡率や定義された臨床症状などの客観的な評価指標はバイアスを軽減します。特に、C反応性蛋白質の陰性と感染症の兆候のない患者の選択は、効果的な実装のために地元の検査室の能力を必要とする場合があります。さらなる研究では、さらに早期の切り替えや外来開始戦略を探索する可能性があります。
生物学的妥当性は、新生児感染症に対する経口アモキシラリンの高い生物利用能と証明された効果性、および初期の注射剤治療後の臨床改善により、段階的なケアが可能になることに基づいています。この戦略は、院内感染のリスクや経済的負担を軽減し、家族中心のケアを向上させる可能性があります。
結論
この多施設オープンラベルRCTは、中等度死亡リスクのPSBIを有する若年乳児において、48時間の入院治療後に注射剤から経口抗生物質への切り替えと早期退院が、標準的な長期入院注射治療と比較して非劣性であることを示しています。この証拠に基づいたアプローチの採用は、希少な医療資源をより効果的に活用し、入院期間を短縮し、多様な低・中所得国の優れた臨床結果を維持します。政策立案者と医療従事者は、PSBIを有する適切な若年乳児に対して、経口ステップダウン療法を伴う早期退院プロトコールの実施を検討すべきです。
資金提供と臨床試験登録
本研究は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団によって資金提供されました。ISRCTNレジストリで登録番号ISRCTN16872570で登録されています。
参考文献
PSBI Study Group. Switching antibiotic therapy from injectable to oral to optimise the duration of inpatient care for young infants presenting with moderate-mortality-risk signs of possible serious bacterial infection: an open-label, multicountry, randomised controlled trial. Lancet Glob Health. 2025 Nov;13(11):e1903-e1913. doi: 10.1016/S2214-109X(25)00311-0. PMID: 41109261.