脳卒中は、依然として世界的な死亡および障害の主要な原因です。女性は、既知の複数のリスク因子、十分に認識されていない社会心理的影響、および女性特有の生殖因子により、独特の脳卒中リスクに直面しています。これらのカテゴリーの相対的な影響を理解することは、効果的な予防戦略を策定するために不可欠です。
目的
この前向きコホート研究は、女性に特有のリスク因子プロファイルに関連する脳卒中の**人口寄与割合(PAFs)**を定量化し、これらのリスクが年齢層によってどのように変化するかを調査することを目的としました。
方法
研究では、英国バイオバンクに登録された239,200人の女性のデータを分析しました。脳卒中リスク因子は、**「The Lancet Women and Cardiovascular Disease Commission」**によって確立されたフレームワークに従って、3つのカテゴリーに分類されました。
- 8つの既知の伝統的リスク因子(例:高血圧、喫煙)
- 4つの社会心理的リスク因子(例:低い社会的支援、高いストレス)
- 11の生殖因子(例:初潮年齢、閉経年齢、出産回数、ホルモン治療の使用)
多重比較補正を用いたCox比例ハザード回帰モデルを用いて、これらのリスク因子と新規発症脳卒中およびそのサブタイプ(虚血性および出血性脳卒中)との関連を評価しました。個々のリスク因子、リスク因子カテゴリーごと、およびすべてのリスク因子の組み合わせが脳卒中症例に占める割合を推定するために、人口寄与割合(PAF)を算出しました。年齢層別に分析を層別化し、年齢に関連する差異を検討しました。
結果
中央値13.8年の追跡期間中に、4,580人の女性(1.9%)が初めて脳卒中を発症しました。高血圧が主要な個別リスク因子であり、PAFは23.3%(95%信頼区間[CI]:20.1%〜26.4%)でした。これは、このコホートにおける脳卒中症例のほぼ4分の1が高血圧に起因することを意味します。
乗法効果を仮定すると、8つの既知の伝統的リスク因子は、脳卒中症例の合計32.8%を説明しました。社会心理的因子は15.2%、生殖因子は6.3%を占めました。すべてのリスク因子の総合的なPAFは、乗法仮定下で47.6%(95% CI:47.6%〜47.7%)、加法仮定下で40.2%(95% CI:40.1%〜40.2%)でした。
年齢層別の分析では、60〜65歳の女性で総合的なリスク因子のPAFが最も高く(51.9%)、そのうち既知の伝統的リスク因子は37.0%でした。生殖因子については、60〜65歳の女性が最も高い寄与割合(9.2%)を示し、65歳以上の女性では4.5%でした。これは、閉経後の女性における脳卒中リスクに対する生殖歴の重大な影響を浮き彫りにしています。
考察
伝統的な修正可能なリスク因子、特に高血圧は、女性の脳卒中リスクの最大の要因です。しかし、慢性的なストレス、社会的孤立、低い社会経済的地位などの社会心理的因子も有意な影響を示しており、臨床診療では見過ごされがちです。さらに、ホルモンの変化や生殖歴を含む女性特有の生殖因子も、脳卒中リスクに重要な役割を果たしています。
これらの発見は、伝統的な心血管リスク管理を超えた包括的な脳卒中予防アプローチの重要性を強調しています。健康の社会的決定要因に対処し、女性の生殖歴をリスク評価に組み込むことで、リスクの高い個人の特定率を高めることができます。
予防への示唆
女性の効果的な脳卒中予防には、生涯にわたる総合的で的を絞った戦略が必要です。これには、高血圧やその他の伝統的リスク因子に対する積極的な管理に加え、社会心理的幸福を改善し、不利な生殖健康状態に対処するための介入が含まれます。
医療提供者は、臨床評価において社会的ストレス要因や生殖リスク因子をスクリーニングすることを考慮すべきです。社会的不平等を減らし、女性の生殖健康を支援することを目的とした公衆衛生政策は、脳卒中の負担をさらに軽減することができます。
結論
既知のリスク因子が女性の脳卒中負担に最も大きく寄与していますが、社会心理的および生殖因子の重要な役割を無視してはなりません。これらの多様なリスク因子に包括的に対処し、女性の生涯にわたる心血管および脳血管の健康を守るための総合的な予防戦略が緊急に求められています。
参考文献
Sun W, Hou L, Wu J, Shan S, Song P. Population attributable fractions of established, social-psychological and reproductive risk factors for stroke among women: evidence from UK Biobank. Int J Stroke. 2025 Aug 2:17474930251365865. doi: 10.1177/17474930251365865