ハイライト
HTD1801(ベルベリンウルソデオキシコール酸)は、前臨床および臨床(第2相)研究の両方で、代謝機能障害関連性脂肪性肝炎(MASH)および関連する線維化において組織学的な改善を示しました。その効果は、肝脂肪量、線維化指標、および肝酵素の減少を含むバイオマーカーの改善によって反映されました。これらの結果は、特に2型糖尿病患者において、HTD1801がMASH患者に対する治療として大きな可能性を持つことを示唆しています。
研究背景と疾患負荷
代謝機能障害関連性脂肪性肝炎(MASH)は、非アルコール性脂肪肝疾患の重症形態であり、肝脂肪症、炎症、進行性線維化の特徴があります。MASHは、肥満、インスリン抵抗性、2型糖尿病(T2DM)との強い関連があり、世界的な健康問題となっています。その普及にもかかわらず、MASHの肝臓組織学的改善と線維化を直接改善する有効な薬物療法は限られており、重要な未充足の臨床的ニーズを代表しています。ベルベリンウルソデオキシコール酸(HTD1801)は、肝脂質代謝と線維化に関連する複数の病態生理学的経路を対象とした治療薬として、このギャップを埋めることが期待されています。
研究デザイン
HTD1801の有効性と安全性は、以下の2つの補完的な研究を通じて調査されました:
- 前臨床研究: 高脂肪食を摂取したゴールデンハムスターを使用して、MASH/異常脂質血症のマウスモデルが作成されました。各グループ8匹の動物が、6週間毎日HTD1801またはプラセボで処置されました。組織学的評価には、線維化評価と非アルコール性脂肪肝疾患活動性スコア(NAS)が行われ、肝臓の変化が定量されました。
- 第2相臨床研究: この無作為化、プラセボ対照、18週間の研究には、推定MASHおよびT2DMの患者100人が含まれました。二次解析では、線維化と疾患解決に関連する複数の非侵襲的バイオマーカーに焦点を当てました。これらには、MRIプロトン密度脂肪分数(MRIPDFF)、鉄補正T1(cT1)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、体重減少、Fibrosis-4(FIB-4)指数、およびMASH解決指数が含まれます。
主要な知見
前臨床結果: ハムスターモデルでのHTD1801の投与により、組織学的な改善が著しく示されました。線維化は著しく減少し、NASスコアは正常対照群に近いレベルに改善しました。これらの結果は、HTD1801が肝臓病変に及ぼす影響のメカニズム的証拠を提供しています。
臨床結果: 第2相研究では、HTD1801投与群の52%がMRI定義の基準(肝脂肪量の少なくとも30%の減少)を達成し、プラセボ群の24%(P < 0.05)に対比しました。さらに、非侵襲的マーカーでは、鉄補正T1時間(線維化軽減を示す)、ALTレベル、および低い線維化スコア(FIB-4 < 1.3)への移行が、用量依存的に改善しました。約半数の投与患者がMASH解決に一致する基準を満たしており、非侵襲的モダリティによる組織学的改善を推測する根拠を支持しています。
安全性: HTD1801は良好に耐容され、第2相コホートでは予期しない安全性信号は報告されていません。これは、さらなる臨床開発に向けた良好なリスクプロファイルを示しています。
専門家コメント
確立された前臨床MASHモデルでの組織学的改善と、第2相試験での非侵襲的バイオマーカー反応の補完的な証明は、HTD1801を有望な治療候補として位置づけます。プロトン密度脂肪分数や鉄補正T1を含む多パラメトリックMRIの使用は、侵襲的な生検なしで線維化と脂肪肝の評価の信頼性を高めます。さらなる大規模な、生検証明された試験が必要ですが、これらの結果を検証し、より広範な患者集団に適用するための観察を拡張することが望まれます。
メカニズム的には、ベルベリン誘導体は脂質代謝、抗炎症経路、細胞内酸化ストレスの調整を介して作用することが知られており、組織学的改善の観察結果に寄与していると考えられます。現在の治療アルゴリズムへの統合は、特に進行性肝疾患のリスクが高いT2DMを合併する患者にとって、MASH患者の利益につながる可能性があります。
結論
前臨床および臨床の両方の証拠は、HTD1801が代謝機能障害関連性脂肪性肝炎の患者における有意な組織学的改善をもたらす可能性を支持しています。安全性プロファイルとバイオマーカー効果の兆候は、治療効果と長期的な結果を確認するために第3相試験への進展を正当化しています。HTD1801は、重要な未充足の治療ニーズを持つ疾患に対する新たな薬物選択肢となる可能性があります。
参考文献
Wong VW, Neff GW, Di Bisceglie AM, Bai R, Cheng J, Yu M, Liberman A, Liu L, Gunn N. HTD1801 demonstrates promising potential for histologic improvements in metabolic dysfunction-associated steatohepatitis in both a preclinical and phase 2 study. Clin Mol Hepatol. 2025 Jul;31(3):1071-1083. doi: 10.3350/cmh.2025.0145. Epub 2025 Apr 21. PMID: 40258699; PMCID: PMC12260645.