大腸がん腫瘍微生物相のパスボイント:生存予測と腫瘍学的結果の形成

大腸がん腫瘍微生物相のパスボイント:生存予測と腫瘍学的結果の形成

研究背景と疾患負荷

大腸がん(CRC)は世界中で主要ながんの発症率と死亡率の原因の一つです。手術療法や全身療法の進歩にもかかわらず、腫瘍の異質性や基礎的な生物学的要因により、腫瘍学的結果の予測は依然として困難です。最近の証拠は、腸内微生物相—腸粘膜に生息する複雑な微生物群集—がCRCの病態形成に影響を与え、腫瘍の発生、進行、治療反応に影響を及ぼすことを示しています。特に、腫瘍粘膜微生物相には、一定条件下で疾患を引き起こす可能性のあるパスボイント—疾患を引き起こす可能性のある微生物—が含まれており、発がんと患者予後に影響を与える可能性があります。

本研究は、大腸腫瘍内の粘膜微生物相の構成と代謝機能を明確にし、切除後の生存結果に対する影響を検討するという重要な未充足ニーズに対処しています。これらの微生物ネットワークを理解することは、CRC管理における新しい予後バイオマーカーや治療ターゲットを提供する可能性があります。

研究デザイン

この多施設、前向き観察コホート研究では、英国(n = 74)とチェコ共和国(n = 61)で原発性大腸がんと診断され、根治的手術切除を受けた患者が対象となりました。研究には、腫瘍粘膜微生物相のメタタクソノミックプロファイリング(細菌16S rRNA遺伝子シーケンス)、詳細な代謝解析(超高性能液体クロマトグラフィー-質量分析装置(UPLS-MS))、標的細菌定量PCRアッセイ、および包括的な腫瘍エクソームシーケンスが組み込まれました。階層クラスタリング法により、臨床的・腫瘍学的共変量を調整して、CRCと関連する異なる細菌および代謝物クラスターが識別されました。コックス比例ハザードモデルを使用して、これらのクラスターと無病生存との関連性を、中央値50ヶ月の追跡期間中に評価しました。

主要な知見

13つの粘膜微生物相クラスターが同定され、そのうち5つは腫瘍と一致した正常粘膜との間に有意な差異を示しました。最も注目すべきはクラスター7で、Fusobacterium nucleatumとGranulicatella adiacensというパスボイントが豊富で、腫瘍組織と強く関連していました(PFDR=0.0002)。興味深いことに、このクラスターの腫瘍優位性は、有利な無病生存を独立して予測し(調整p=0.031)、これらの細菌に関連する潜在的な保護的または腫瘍抑制的な微小環境を示唆しています。

一方、クラスター1は、Faecalibacterium prausnitziiやRuminococcus gnavusなどの共生菌を含み、がんとは負の関連を示しました(PFDR=0.0009)、しかし、無病生存の悪化を独立して予測しました(調整p=0.0009)。このパラドックスな結果は、特定の細菌の存在が侵襲的な腫瘍生物学や変化した免疫応答を反映している可能性を示唆しています。

代謝解析では、主に中鎖、長鎖、非常に長鎖脂肪酸、セラミド、リゾホスホリピドが豊富なメタボロームクラスター1(Met 1)がCRCの存在と逆の関連を示しました(PFDR=2.61×10^-11)かつDNA不適合修復欠損と相関していました(p=0.005)。一方、リン脂質種、ヌクレオシド、アミノ酸が特徴的なメタボロームクラスター2(Met 2)はCRCと正の関連を示しました(PFDR=1.30×10^-12)が、生存結果との関連は見られませんでした。

エクソームシーケンスでは、微生物相クラスター7を主導する腫瘍にFBXW7突然変異が排他的に見つかり、腫瘍生物学と予後に影響を与える可能性のある遺伝子-微生物相相互作用が示されました。

専門家コメント

本研究は、CRC腫瘍微生物相の特定の細菌パスボイントネットワークが腫瘍遺伝子変異と代謝型と相関し、手術後の臨床結果を予測することを示し、CRCの理解を進展させました。Fusobacterium nucleatumのようなパスボイントが良好な予後に関連していることは、以前の研究で不良予後と関連していることと対照的であり、これは空間的な腫瘍ニッチの違いやホスト免疫コンテキストを反映している可能性があります。典型的な共生菌の負の予後影響は、従来の見解に挑戦し、微生物-ホスト-腫瘍の相互作用の複雑さを強調しています。

制限点には、観察的研究設計や比較的小規模なコホートが含まれており、因果関係を解明するための独立した、より大きな集団での検証が必要です。これらの制約にもかかわらず、知見は個別化された予後推定や微生物相を標的とした介入を最適化するために利用できる可能性があります。

結論

大腸腫瘍微小環境内の特定のパスボイントネットワークは、腫瘍変異シグネチャーと代謝サブタイプと密接に関連しており、根治的手術後の無病生存を独立して予測します。これらの洞察は、腫瘍微生物相の予後有用性を明らかにし、微生物コミュニティを標的とした治療アベニューを改善することでCRC患者の結果を向上させる可能性を示唆しています。

参考文献

  • Alexander JL, Posma JM, Scott A, et al. Pathobionts in the tumour microbiota predict survival following resection for colorectal cancer. Microbiome. 2023;11(1):100. doi:10.1186/s40168-023-01518-w.
  • Garrett WS. Cancer and the microbiota. Science. 2015;348(6230):80-86. doi:10.1126/science.aaa4972.
  • Kostic AD, Chun E, Robertson L, et al. Fusobacterium nucleatum potentiates intestinal tumorigenesis and modulates the tumor-immune microenvironment. Cell Host Microbe. 2013;14(2):207-215. doi:10.1016/j.chom.2013.07.007.

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