心筋梗塞後のβブロッカー中止が血圧と心拍数に与える影響: AβYSS試験

心筋梗塞後のβブロッカー中止が血圧と心拍数に与える影響: AβYSS試験

背景と目的

この研究は、心筋梗塞(MI)後にβブロッカー薬を中止することによる血圧(BP)と心拍数(HR)への影響に焦点を当てています。具体的には、AβYSS試験のデータを提示し、MIを経験した患者をβブロッカー療法を継続する群と中止する群に無作為に割り付けました。目的は、βブロッカーを中止することでこれらの心血管パラメータに変化が生じるかどうかを評価することです。

方法

AβYSS試験に登録された3,698人の患者を分析しました。基線から無作為化時点までのHRとBPの変化を線形混合反復モデルを使用して評価し、中央値3.0年の追跡調査を行いました。また、HRとBPの変化とその主要エンドポイント(死亡、再発性MI、脳卒中、心血管疾患による入院)への影響を、高血圧の有無によって事前に指定されたサブグループで評価しました。これには線形混合反復モデルと調整コックス比例ハザードモデルを使用しました。

結果

結果は、βブロッカーの中止が6ヶ月時点で収縮期および拡張期BPと安静時のHRの有意な上昇をもたらしたことを示しました。
– 収縮期BPは+3.7 mmHg [95% CI: 2.6, 4.8], P < .001 上昇しました。
– 拡張期BPは+3.3 mmHg [95% CI: 2.6, 4.0], P < .001 上昇しました。
– 安静時のHRは+10回/分 [95% CI: 9, 11], P < .001 上昇しました。

これらの変化は、βブロッカー中止群での降圧剤の使用増加にもかかわらず、追跡期間を通じて一貫していました。βブロッカーの中止の効果は、高血圧患者(サンプルの43%)と非高血圧患者の両方で観察され、特に高血圧患者では悪性イベントのリスクが高いことが示されました。高血圧患者の25.8%が悪性の結果を経験したのに対し、非高血圧患者は19.2%でした。高血圧患者の調整ハザード比は1.18で、95%信頼区間は1.01-1.36 (P = .03) でした。特に懸念されるのは、高血圧患者でβブロッカー中止に無作為化された群での主要エンドポイントの顕著な増加で、リスク差は5.02% (95% CI: 0.72%-9.32%, P = .014) でした。

結論

AβYSS試験の結果は、無合併症のMI後におけるβブロッカー治療の中止が、血圧と心拍数の有意かつ持続的な上昇を引き起こす可能性があることを示しています。これらの上昇は、特に高血圧の既往のある患者にとって悪性の結果につながる可能性があります。医師は、この患者集団においてβブロッカーを中止することに関連するリスクを慎重に検討し、治療レジメンの恩恵と血圧や心拍数の上昇の可能性を天秤にかけるべきです。

参考文献

– Procopi N, Zeitouni M, Kerneis M, Cayla G, Ferrari E, Range G, Puymirat E, Delarche N, Guedeney P, Beygui F, Desprets L, Georges JL, Bochaton T, Schiele F, Ducrocq G, Hauguel-Moreau M, Dumaine R, Slama MS, Payot L, El Kasty M, Aacha K, Diallo A, Girerd X, Vicaut E, Silvain J, Montalescot G. Beta-blocker interruption effects on blood pressure and heart rate after myocardial infarction: the AβYSS trial. Eur Heart J. 2025 Aug 1;46(29):2894-2902. doi: 10.1093/eurheartj/ehaf170. Erratum in: Eur Heart J. 2025 Jul 10:ehaf510. doi: 10.1093/eurheartj/ehaf510. PMID: 40401436.

Comments

No comments yet. Why don’t you start the discussion?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です