ハイライト
- ツシルリズマブ(抗PD-1モノクローナル抗体)、レナチニブ(多キナーゼ阻害剤)、GEMOX化学療法の組み合わせは、切除不能局所進行胆道癌(BTC)で63%のR0切除率を達成しました。
- この治療法は管理可能な毒性を示し、治療関連死亡例はなく、最も多いグレード3-4の有害事象は好中球減少症でした。
- この研究は、以前切除不能とされたBTC患者の手術適応を増加させる可能性のある効果的な変換療法戦略を支持する証拠を提供しています。
研究背景
胆道癌には、肝内胆管がん、肝門部胆管がん、胆のうがんが含まれ、これらは進行した段階で発見されることが多く、予後が不良です。多くの患者は切除不能な病状で診断され、治癒的な手術が不可能となります。切除範囲外の腫瘍を縮小し、切除不能な症例を切除可能に変換するための戦略が緊急に必要とされています。特に中国では疾患負荷が高く、標準的な変換療法が確立されていません。免疫療法と標的療法、化学療法の組み合わせは進行性BTCで有望な結果を示していますが、変換療法として広く調査されていません。
研究デザイン
ZSAB-TransGOLP試験は、中国の2つの施設で実施された単群、多施設、前向き第2相試験です。対象患者は18歳から70歳までで、局所進行切除不能胆道癌、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータス0-1、Child-Pugh Aの肝機能、予後3ヶ月以上とされました。介入は以下の3サイクル(21日サイクル)で構成されました:
- ツシルリズマブ 200 mg 静脈内投与(1日目)
- GEMOX化学療法:ジェムシタビン 1000 mg/m² 静脈内投与(1日目と8日目)、オキサリプラチン 85 mg/m² 静脈内投与(1日目)
- 経口レナチニブ 8 mg 1日1回
腫瘍の再評価は3サイクルごとに多職種チームによって行われ、R0切除が可能な患者は手術を受けました。6サイクル後も切除不能な患者は、1年間の治療、進行、毒性、または他の研究者定義の理由まで、ツシルリズマブとレナチニブの維持療法に入りました。主要評価項目はR0切除率でした。
主な知見
2021年12月から2023年7月までの間に52人がスクリーニングされ、41人が登録され治療を受けました。基線特性には、中央値年齢58歳、男女比ほぼ均等が含まれ、平均GOLPサイクル数は3回でした。
- 手術への変換:41人のうち28人(68%)が手術を受けました。
- R0切除率:63%(26/41;95% CI 47-78)。
- 中央値追跡期間:19.5ヶ月。
安全性プロファイル:
- 全患者が少なくとも1つの治療関連有害事象(TRAE)を経験しました。
- グレード3-4 TRAEは49%で確認され、最も一般的なものは好中球減少症(34%)でした。
- 重大なTRAEは10%で確認され、好中球減少症(7%)と血小板減少症(2%)が含まれました。
- 治療関連死亡は報告されませんでした。
このR0切除率は、この設定での変換療法の歴史的コントロールよりも著しく高いことを示しており、組み合わせ療法の強力な抗腫瘍活性を示唆しています。
専門家コメント
この研究は、切除不能胆道癌という難題に対する重要な進歩を表しています。免疫チェックポイント阻害薬(ツシルリズマブ)と標的抗血管新生療法(レナチニブ)、細胞障害性化学療法(GEMOX)の組み合わせは、補完的なメカニズムを活用して腫瘍制御を改善します。観察されたR0切除率は、以前の変換療法レジメンと比較して有利であり、BTC治療パラダイムにおける免疫療法ベースの組み合わせの導入を支持します。
ただし、単群第2相試験であるため、確定的な比較結論はランダム化試験を待つ必要があります。比較的小規模なサンプルサイズと中国人患者のみの登録により、汎用性が制限される可能性があります。骨髄抑制やその他の毒性の綿密なモニタリングは引き続き重要です。今後の研究では、最適な治療期間と順序付け、予測バイオマーカーの探索が必要です。
結論
ZSAB-TransGOLP第2相試験は、ツシルリズマブ、レナチニブ、GEMOXを用いた変換療法が、切除不能局所進行胆道癌患者において実現可能で安全であり、有望に高いR0切除率を達成することを示しています。このアプローチは、BTC患者の手術適応を増加させ、長期予後を改善する可能性があり、より大規模なランダム化試験と長期追跡が必要です。
資金提供と臨床試験登録
この研究は、上海市学術研究リーダープログラム、上海市徐匯区重点疾病連携研究プログラム、上海市衛生委員会臨床研究特別プロジェクト、中国博士後科学基金、中国国家科学技術重大プロジェクト、復旦大学付属中山病院優秀臨床博士後プログラム、中国国家自然科学基金、上海市セーリングプログラムの支援を受けました。本試験はClinicalTrials.gov(NCT05156788)に登録されており、現在募集は終了していますが、継続中です。
参考文献
Shi G, Huang X, Li X, Liang F, Gao Q, Zhang D, Lu J, Ji Y, Hu Z, Chen Y, Qiu S, Yi Y, Zhu X, Sun H, Shi Y, Peng M, Wang X, Huang C, Ding Z, He Y, Shen Y, Xu Y, Xiao Y, Hu J, Zhou J, Fan J. Conversion therapy of tislelizumab plus lenvatinib and GEMOX in unresectable locally advanced biliary tract cancer (ZSAB-TransGOLP): a multicentre, prospective, phase 2 study. Lancet Oncol. 2025 Oct;26(10):1334-1345. doi: 10.1016/S1470-2045(25)00376-6. Epub 2025 Aug 29. PMID: 40889502.