ハイライト
- 救急外来退院後の多回投与オンドセトロンは、嘔吐を伴う小児の胃腸炎における中等度から重度の病状リスクを低下させる。
- 退院後48時間以内の嘔吐エピソード総数は、オンドセトロン群の方がプラシーボ群よりも少ない。
- 予定外の医療機関訪問、静脈内補液使用、副作用に有意な違いは認められなかった。
臨床的背景と疾患負荷
急性胃腸炎は世界中で小児の罹患率を引き上げる主な原因であり、外来と救急設定において大きな影響を与えている。嘔吐は脱水、医療機関訪問の増加、親の不安を引き起こすしばしば苦痛を伴う症状である。オンドセトロンは選択的な5-HT3受容体拮抗薬で、嘔吐制御と経口再水化を促進するために救急外来(ED)で広く使用されている。単回投与の効果は確立されているが、退院後の継続投与の利点は不確かなままである。北米では、オンドセトロンを自宅で使用することが一般的な実践となっている。
研究方法
この多施設、二重盲検、無作為化優越性試験は、カナダの6つの小児救急外来で行われた。対象者は、6ヶ月以上18歳未満で急性胃腸炎関連嘔吐を呈した小児であった。登録後、保護者は、持続性嘔吐のために退院後48時間以内に必要に応じて使用する6回分の経口オンドセトロンまたはマッチングプラシーボを受け取った。主要評価項目は、登録後7日以内に改訂Vesikariスケールスコア≥9で定義される中等度から重度の胃腸炎の発症率であった。二次評価項目には、嘔吐の有無と持続時間、初回48時間内の嘔吐エピソード数、予定外の医師訪問、静脈内補液投与、副作用が含まれた。
主要な知見
1030人の小児が無作為化され、893人(オンドセトロン群452人、プラシーボ群441人)のデータが利用可能であった。オンドセトロン群では5.1%、プラシーボ群では12.5%が中等度から重度の胃腸炎を発症し、絶対リスク減少率は7.4パーセントポイント(95% CI, −11.2 to −3.7)であった。調整オッズ比(aOR)は0.50(95% CI, 0.40–0.60)で、リスクが臨床的に意味のある半分に減少したことを示している。
嘔吐を経験した小児の割合や嘔吐の中央値持続時間には、グループ間で有意な差はなかったが、登録後48時間内の嘔吐エピソード総数はオンドセトロン群で低い(調整レート比, 0.76; 95% CI, 0.67–0.87)ことがわかった。しかし、追跡期間中の予定外の医療機関訪問や静脈内補液使用の頻度は、グループ間で同様であった。副作用の頻度は実質的に同等(aOR, 0.99; 95% CI, 0.61–1.61)であり、この状況での多回投与オンドセトロンの安全性を支持している。
評価項目 | オンドセトロン (%) | プラシーボ (%) | 効果推定値 (95% CI) |
---|---|---|---|
中等度から重度の胃腸炎 | 5.1 | 12.5 | リスク差: -7.4 (-11.2 to -3.7) |
嘔吐 (7日以内) | — | — | 有意な差なし |
嘔吐エピソード数 (48h) | — | — | レート比: 0.76 (0.67–0.87) |
予定外の医療機関訪問 | — | — | 有意な差なし |
副作用 | — | — | オッズ比: 0.99 (0.61–1.61) |
メカニズムの洞察
オンドセトロンは、中枢神経系と消化管系のセロトニン(5-HT3)受容体をブロックすることで、ウイルス性胃腸炎によって引き起こされる嘔吐反応を抑制する。急性期の嘔吐を軽減する効果により経口補水が促進され、本試験で観察された病状の重症度低下を説明できる可能性がある。
議論と限界
いくつかの限界が考慮されるべきである。本研究はカナダの小児三次医療施設で実施されたため、異なる医療インフラや患者集団を持つ設定への一般化可能性が制限される可能性がある。プロトコルでは、保護者がオンドセトロンを投与するかどうかを自由に決定できたため、服薬の順守性に変動が生じる可能性がある。その後の医療利用や静脈内補液投与への影響が有意でないことは、症状の重症度は軽減されるものの、リソース利用は変わらないことを示唆している。6ヶ月未満の非常に小さな乳児の長期安全性や効果は評価されていない。
結論
救急外来を受診した後に胃腸炎関連嘔吐を伴う小児に退院時に処方される多回投与オンドセトロンは、救急外来受診後1週間の病状の重症度を有意に低下させる。その使用は副作用や予定外の医療機関利用を増加させず、自宅での嘔吐制止剤としての安全性と効果性を支持している。医師はこれらの利点を個々のリスク要因や地域の実践パターンと照らし合わせるべきである。さらに研究を行うことで、最適な投与スケジュールを明確にし、最大の利益を得られるサブグループを特定することができる。
参考文献
1. Freedman SB, Williamson-Urquhart S, Plint AC, et al; Pediatric Emergency Research Canada Innovative Clinical Trials Study Group. Multidose Ondansetron after Emergency Visits in Children with Gastroenteritis. N Engl J Med. 2025 Jul 17;393(3):255-266. doi:10.1056/NEJMoa2503596 IF: 78.5 Q1 . PMID: 40673584 IF: 78.5 Q1 .2. Carter B, Fedorowicz Z, Campbell H. Antiemetic treatment for acute gastroenteritis in children: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2004;329(7457):1373-1377.3. Guidelines for the management of acute gastroenteritis in children and adolescents. JAMA. 2018;319(21):2167-2168.